女神転生バトルロワイヤルまとめ
第2話 達哉VS勇

「ここは…青葉区か」
周防達哉は緑豊かな公園の中を進む。
「とりあえずみんなと合流しなくては。」
学園にいたのはリサ、何故かペルソナの共鳴を感じた兄の克哉、そして…
「摩耶姉が生きていた…俺たちは成功したのか?…でも、俺は確かに覚えてる。それにリサからも共鳴が感じられた…」
摩耶の死を、世界の崩壊を回避するために過去を変えようとした。成功したなら戦いの記憶もペルソナ能力もなくなっているはずだ。
自分のペルソナを確認する。
アポロ。真紅をまとう太陽の神であり、達哉に最も近い分身である。
これがある限り自分たちペルソナ使いは圧倒的に有利であろう。しかし主催者の言葉が気に掛かる。
―街には悪魔が出現する場所がある
―協力を求めるか…
協力。それが意味するのは果たして自分達が行っていたような情報や道具のやりとりのみなのだろうか…。
かつて彼はたまきが悪魔を召喚するのを見たことがある。


悪魔を使役する。あんなことは自分達には出来ない。
恐らく彼女の持っていた銃のような機械が必要なのだろう。
支給品にはそれらしきものはなかった。あるのは宝玉とチューインソウル、そして…
「これは…虫?何か使い道があるのか…?」
とりあえずしまっておく。頼りない道具ばかりだが無いよりはましだ。
支給品にあの機械があるなら、まずい。悪魔と人、複数相手するのは不利だ。
ゲームに乗っている者がいるなら、強力な悪魔を仲間にする前に叩かなくては…
とにかく、仲間を探す。人数を集め、主催者に対抗しよう。
「摩耶姉…」
あの人だけは、守る。もう二度と死なせはしない。
必要なら、向かってくる人間を殺すのもしかたない。
ふと、思考を中断する。近くから視線を感じる。
ペルソナの共鳴は感じない、しかし確かに殺気を帯びた視線。


新田勇はじっと獲物を観察していた。
ごく普通の、若者だ。学生服を着てるので、高校生、自分と同じぐらいの年ごろだろう。
自分のかつての友人のように、悪魔を引きつれているわけでも、異形の姿をしているわけでもない。
―楽勝だ。
彼の上半身には幾つもの顔が張り付いていた。死んだ人の残留思念…思念体である。
この為彼には悪魔と同等の力がある。
しかし、悪魔と融合したり悪魔そのものとなったかつての友人にはかなわない
彼らに対抗するためには"神"を召喚しなければ。
その為に、人間からマガツヒを搾り取る。
マガツヒはエネルギーのようなもので、人間から大量にとれる。


すぐには殺さない。苦痛を与えて、できるだけマガツヒを搾り取ってやろう。
そうだ、思念体と融合した自分なら、悪魔と交渉して仲魔にできるかもしれない。
そいつらにやらせよう。その間に自分は他の獲物を探す。
拷問は何をしよう。鞭で打つ、皮を剥ぐ、骨を砕く…かつてマガツヒのために自分が悪魔にされた以上のことをしてやろう。
そして"神"を呼び、残りの参加者を殺し、自分がゲームに勝つ。
ゲームの参加者はなんの力も持たない連中ばかりだろう。
人間からなら2、3人分で十分だ。笑いがこぼれる。期待に胸が弾む。
「へえ…気付いたか、勘がいいんだな、ん?」


現われたのは少年。年齢は達哉とそう変わらないだろう。しかしその姿は普通ではなかった。
「お前は…」
「武器も持たないでウロウロしてるなんてな。何も武器が無かったのか?ご愁傷様。」
そう言う少年は銃を構えている。
「心配すんな。軽ーく足を撃つだけさ。死なれたらもったいないんでな。」
ゲームに乗っている。敵だ。
その姿から、常人でないのは分かる。問題は、どれだけの実力があるのか。どんな能力があるのかだ。
能力を使わず銃を向けるということは、相手はペルソナを知らない。あなどっている。
「抵抗すんなよ?それだけ痛い、怖い思いをするだけだぜ」
パンッ
引き金が引かれる。


「避けた…か。違うな、俺が外したんだ。使い慣れない武器を使うもんじゃないなあ」
「反動を受けている。狙いも正確じゃない。避ける必要もなかった」
こいつのスカした顔がむかつく。恐怖に震えさせてやりたい。ちょっと早いが、見せてやるか?
「はは…強気だな。自分の状況判ってないんじゃね?」
この顔、二度と見れないようにしてやろう。火だ。殺さない程度に焼いてやろう。
集中する。訝る相手と目が合う。ニヤリと笑い、一気に力を放つ。
火柱が燃え上がる。避けようと動いたようだが、驚きで動きが止まったようだ。
やりすぎたか?…まあいいや。他にもいっぱいいるしな。
火柱が消える。黒焦げになった奴が静かに倒れる…はずだった。


避けるつもりだった。しかし、力が放たれて、避ける必要が無いのに気が付いた。
火。太陽の神の加護を持つ達哉にそれが効くはずもなかった。
「嘘だろ…?いや、また外したんだな。実はあんま使ったことないんだ。練習しなきゃな…まあ、次はちゃんと当てるよ」
「悪いが…次はない。」
相手の背後に移動する。今のこいつには、それだけの隙がある。そして…
「もう…終わりだ…!」
ノヴァサイザー。相手を高温で焼き尽くす。至近距離で放つ必要があるが、一発でしとめるには、これが一番確実だろう。
真紅の太陽神が現われ、少年に裁きを下す。
悲鳴はなかった。ジュッと肉の焼ける嫌な音がしただけだった。
炎が消え、後に残るのは塵のみ。この地の、口をきくと噂される花々の肥料となるだろう。
達哉は静かにその場を離れる。街に出て、仲間を探そう。うまく行けばよい武器や道具も手に入るかもしれない。


【周防達哉(罪主人公):生存 現在位置:青葉公園】

【新田勇(真3):死亡(焼死) 死亡位置:青葉公園】
【残り ?名】

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