女神転生バトルロワイヤルまとめ
第6話 ザ・ヒーロー、大道寺伽耶

ザ・ヒーローは転送が完了してすぐ近くの民家に身を隠した。
まずは一緒に送られてきた鞄を開ける。
食料、地図、ルールブック・・・そして武器とアイテム。
武器とアイテムはランダムといっていたのを思い出した。
つまりスタートラインは同じではないということだ。
自分に支給された武器を確認する。
最初はあたりを引いたと思った。
大型の拳銃だと・・・。
しかし、違った。
トリガーはあるが銃口が無い、弾倉も無い・・・。
調べていると説明書があるのに気づいた。
その説明書によればこれはガンタイプコンピュータ・・・通称GUMPというらしい。
ざっと読んだところ、自分の使っていたアームターミナルの小型軽量版というところか。
説明書に従いトリガーを引きGUMPを展開する。
悪魔は入っていない。
機能は・・・アナライズにオートマッピング。ここまでは自分の使っていたアームターミナルと同じだった。
しかし「悪魔合体」と「インストールソフト」
大掛かりな機械なしで合体を行える機能とさまざまな機能を付け加えることのできる機能。
インストールソフトのほうはソフトが無いのでどうしようもないが合体のほうはありがたい。
ここに邪教の館があるとも思えない。
召喚アイテムを支給されたものの中では有利といえよう。
次にアイテムを確認する。
マグネタイトが3000・・・交渉と召喚に使えということだろうか。
「・・・・・」
これからどうするべきか?
ザ・ヒーローは考える。
進んで虐殺するつもりも無いが黙って殺されるわけには行かない。
そうするとまずは自衛手段の確保が最優先か。
自分の武器がこれで有る以上悪魔の出現する場所に出向かねばならない。


すぐに使える武器が必要だ。
主催者はパラレルワールドといっていたが看板の文字などは日本語だ。
つまりここは日本・・・いや、元日本というべきか。
つまり銃器の入手は絶望的といえる。
となれば現実的に見て調達可能なのはナイフや鉄パイプ、よければ刀といったところか。
民家でも包丁くらいはあるだろう・・・あとは水道か何かに使われている鉄パイプを引っこ抜ければ・・・。
台所に向かう。
予想通り包丁はあっさり入手できた。
鉄パイプもネジが硬く苦戦したがドライバーを見つけなんとか分解に成功した。
次だ。
地図を広げるこのあたりで悪魔が出る場所・・・ざっと周りと照らし合わせてみる。
どうやらここは港南区というらしい。
最も近いのは・・・廃工場。


どうして私がこの場所にいるのかわらなかった。
地下の牢獄で殺されるのを待つはずなのに。
呪いで殺される男を見て恐怖した。
落ち着いて考えてみるとそうではないことに気が付いた。
私は死ななくてはならない存在だ。
私には自殺する勇気など無い。
これで殺してもらえる・・・。
私はふらふらと歩き始めた。
見たことも無い町並みだ。
大きな敷地を取った建物を見つけた。
地図で確認すると悪魔が出る場所のようだ。
悪魔・・・それがどんなもの中は私にはわからない。
しかし、人よりも確実に殺してくれるだろう。
そう思った私は扉を開けた。
かなり重い鉄の扉だったがなんとか開いた。
その時はすぐに訪れた。
「クスクス・・・ニンゲンだぁ・・・」
「ねぇどうする?どうする?」
「決まってんじゃん・・・やっちゃおーよ」
そんな声が聞こえて、悪魔は私の目の前に現れた。
小さな妖精のような悪魔・・・しかし私に敵意を向けているようだ。
「いけぇええええええ!」
妖精たちがこちらに飛んできた。
ああ・・・これで死ねる。
私はそっと目を閉じた。
・・・・・・
・・・・・・
・・・・・・
いつまでたっても衝撃は来なかった。
そっと目を開く。
そこにいたのは2匹の倒れた妖精とおびえている1匹の妖精。
そして一人の青年だった。
彼は妖精とと何か話している。
いや、妖精が彼に命乞いをしているというのが正しい。
彼は言った。
「君が僕らに危害を加えないなら殺す理由は無い」
「僕に協力してくれないか」
妖精は彼のその言葉に安堵した表情をし、一言言った。
「アタシは妖精ピクシー、こんごともよろしく」
するとその妖精はその場から消えていった。


小さなころ元気だったお父様はよく異国の絵本を読んでくださった。
物語の最後で王子様はお姫様を助け出す。
こちらを振り向いた彼は私にこう言った。
「死にに来たのか?」
見透かされた気がした。
私は小さくうなずいた。
「そうか」
彼はため息と共にそう言った。
理由は聞いてこなかった。
「名前は?」
彼は尋ねた。
「・・・大道寺・・・伽耶」
私の声は思ったより落ち着いていた。
もっと震えるかと思ったのに。
彼は再び口を開く
「僕は君を殺さないし、目の前で死んでもらうのも迷惑だ」
「しかし、ここで君と別れても後味が悪い」
「だから一緒に行動しないか」
彼は私に手を差し伸べた。
昔読んだ絵本の王子様。
今目の前にいる彼
王子様に助けられるお姫様。
彼に助けられた私。
自分から死にに来たお姫様は鉄パイプを持った王子様に助けられた。
私は気づいたら彼の手を取っていた。
少しだけ生きたいと思った。
せめて明後日の誕生日までは・・・。


ザ・ヒーローは安堵していた。
交渉がうまくいったことにだ。
悪魔とも・・・彼女ともだ。
特に彼女の扱い。
目の前で死なれても困る。ほおっても置けない。
ましてや自分で殺すわけにもいかない。しかしこのゲームのルール上信用しきるのもまずい。
改めて自分の中途半端さが嫌になるが性分だ、仕方が無いと割り切る。
そこで彼は保護兼監視の名目で彼女に同行を求めた。
結果は成功。
彼女が生きるか死ぬかは彼女が決めることだ。
彼女がどうしても死にたいというのならば自分にとめることはできない。
ましてこのゲームだ、死にたくなくても死ぬかもしれない。
彼女を連れて戦力を増強し生き残る・・・。
自ら上げてしまったハードルだ、越えて見せよう。
ザ・ヒーローは鉄パイプを握る手に力をこめた。
彼の天秤はまだ揺らがない・・・。



【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態 正常
所持品 鉄パイプ 包丁 ドライバー他小型工具 ガンタイプコンピューター
仲魔 妖精ピクシー
現在地 港南区 廃工場第一区画
行動指針 自衛手段の確保 大道寺伽耶の保護と監視

【大道寺伽耶(デビルサマナー葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
所持品 ?
現在地 港南区 廃工場第一区画
行動方針 ザ・ヒーローについていく 生きたいが死ななければならないと思っている

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