「ヒーホー!おいらジャックフロストだホー!こんごともよろぴくー!!」
交渉は順調に進んでいた。
「ふぅ・・・このくらいでいいだろう」
GUMPの容量は悪魔12体。
今のジャックフロストで最初に仲魔にしたピクシーから数えて10体目。
残り2体分はいざというときのために空けておく。
だいぶ充実したといえよう。
しかしどれも低レベルな悪魔ばかり。
交渉が失敗した際伽耶を守るためには悪魔を即座に倒す必要がある。
それも手持ちのつたない武器でだ。
余り強い悪魔は危険だった。
最初の鉄パイプは既にベコベコにへこんでおり使い物にならない。
しかしここは廃工場、代わりのパイプくらいはすぐに見つかった。
仲魔は召喚していない。
ただでさえ少ないマグネタイトだ、交渉の際使いすぎて半分以下になっている現状もある。
しかし、ヒーローには弱い仲魔を集めるだけでもいい希望があった。
ひとつは自分のGUMPの機能悪魔合体。
合体を繰り返せば弱い悪魔から強い悪魔を作れる。
他のCOMPに比べて圧倒的なアドバンテージ。
少なくとも自分の使っていたものには無かったこの機能、利用しない手は無かった。
「では・・・そろそろ移動するのですか?」
伽耶は尋ねた。
彼らの次の行動もう決まっていた
その理由は伽耶の支給品にあった。
彼女の支給品、武器はスタンガン、余りいいものとはいえなかった。
しかしアイテム。
これは大当たりだったといえる。
いや、伽耶一人では大はずれだったろうがザ・ヒーローと行動を共にすることで大当たりに化けた。
それはインストールソフト。
それが三つ。
所持者の傷を自動で治すという「ガリバーマジック」奇襲を防ぐ「百太郎」
そして強制的に合体事故を起こす「コペルニクス」
前者二つの治療と奇襲防止はもとよりコペルニクスの合体事故。
通常の手順をすっ飛ばして上位悪魔を作れるのだ。
しかし、今のままでは使い物にならない。
ザ・ヒーローのGUMPはそれ単独ではソフトをインストールすることはできない。
パソコンなどを仲介してインストールするシステムをとっているようだ。
パソコンの無い現状ではインストールソフトはプラスチックの塊に過ぎない。
パソコンの有る場所への移動・・・これが二人の目的だ。
「私にはよくわからないのですが・・・そのぱそこんというのはどういった場所にあるんですか?」
1と書かれた扉を開け、廃工場の通路に出ると伽耶が口を開いた。
ここを調べているうちにわかったが悪魔が現れるのは数字の振ってある部屋のだけらしい。
しかし地図上では悪魔が出ると書かれているためここにくるのは伽耶のような例外を除けば自分のようなCOMP持ち
だけということになる。
COMP持ちが後から来たところでそこは先に入って仲魔を集めていた自分が有利だ。
最初はここを拠点にするつもりだったがインストールソフトのために予定変更となったのだ。
「そうだね・・・この地図には大まかなことだけしか書いてないけど・・・」
先ほど伽耶にパソコンについて簡単な説明をしたがやはりわかっていないようだ。
むりもない、聞けば彼女は大正時代の人間であるという。
それも大正20年。史実における大正は15年までだったはずだから5年のラグが有る。
ザ・ヒーロー自身も時間を越えたことは有る・・・というと語弊があるがそれに近い経験はしたことがある。
しかし彼女の場合は完全にパラレルワールド。
そこまで考えて頭が痛くなる。
ザ・ヒーローは今のところ戦力の増強に主眼を置いているが最終目的は当然生還である。
今のところ方法は見当も付かないが、ゲームに勝つ以外の方法では主催者の盲点を突かなくてはならないのは確かである。
パラレルワールドすら越えさせる相手・・・隙などあるのだろうか?
そこまで考えて、止めた。
今最も大事なのは死なないことだ。脱出方法は後でいい。
ヒーローは地図を開いた。
「まずパソコンがあって電気が生きているのが最低条件・・・」
「そうなると繁華街の夢先区かビジネス街の青葉区・・・ここは港南区だから・・・近いのは青葉区・・・か」
正直なところ二つとも余り生きたい場所ではなかった。
繁華街にビジネス街。
いかにも役に立つものがありそうな街は参加者も集まるだろう。
となれば・・・有る程度の危険は覚悟しなくてはならない。
当然人の多い場所に行くことはメリットも有る。
仲間が・・・仲魔ではなく仲間が増えるかもしれない。
ロウ・ヒーロー、カオス・ヒーロー、そしてヒロイン。
彼らならば・・・カオス・ヒーローは少し怪しいかもしれないが・・・協力はしてくれるはずだ。
自分たちを除いて40人の参加者の内・・・確実なのは3人。
少ないメリットだ。
インストールの作業を終えた後即離脱して港南区に戻る。
その後合体を繰り返し戦力の増強をした後脱出方法の模索。
これが最善の方法だ。
道は険しい。
「ふー・・・」
ザ・ヒーローはひとつため息をついた。
「・・・伽耶、目的地は青葉区だ・・・すこし歩くし、場合によっては走るけど・・・いけるかい?」
危険性は直接は言わなかった。
「・・・はい」
伽耶もそれに答えた。
「日の出まで後2時間・・・なんとかそれまでに・・・青葉区離脱まで持って行きたい」
ザ・ヒーローと大道寺伽耶。
二人は廃工場の鉄の扉を開け闇に消えていった・・・。
【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態 正常 少々疲労
武器 鉄パイプ×2 ガンタイプコンピューター インストールソフト×3
道具 マグネタイト1400(交渉に使用したため減少)
仲魔 妖精ピクシー 妖精ジャックフロストを始め10体(但し全て低レベル、同時に呼び出せるのは4体まで)
現在地 港南区から青葉区へ移動中
行動方針 戦力の増強 青葉区にてパソコンの入手およびソフトのインストール
【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 スタンガン 包丁(ザ・ヒーローに護身用としてもらう)
道具 無し
現在地 同上
行動方針 ザ・ヒーローについていく
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