女神転生バトルロワイヤルまとめ
第19話 神に選ばれし者

「そろそろ青葉区だ・・・」
ザ・ヒーローと大道寺伽耶廃工場を出てから数十分。
誰にも合わないように歩きづらい場所を歩いてきた。
最初は伽耶の体力を心配していたがそこはお嬢様とはいえ大正の女性。
ザ・ヒーローの認識する女性の体力よりはいくらかあるようだった。
「ええ・・・」
伽耶は答えた。
「言ってなかったのだけれど・・・」
ヒーローが口を開いた。
「これから入る青葉区は・・・僕の考えではおそらく激戦区だ」
「・・・そうなのですか?」
「うん・・・ビジネス街、あーつまり仕事をするための会社が多くある場所だから、役に立つものも多いだから・・・」
「人が集まる・・・ということですね?」
「そう、このゲームにのって本気で殺しに来ている人間がどのくらいいるかわからない・・・だが警戒は必要だ」
「・・・・・・」
伽耶は口ごもった。
伽耶は死ななければいけないと思ってはいたが、死ぬのが怖くないわけでも、まして自分の意思で死にたがっていたわけでもない。
当然恐怖はある。
「最悪の場合・・・君を守りきれないような奴と戦うことになるかもしれない、その時は何体か仲魔を付ける、覚悟をしておいてくれ」
「・・・・・・」
「怖いかい?」
「ええ・・・でも覚悟はできています」
「・・・わかった」
二人は激戦区、青葉区に入る・・・。


どうして自分がここにいる?
他のものはともかくなぜ自分が?
自分は神に選ばれた人間では無かったのか?
参加者は名簿によれば45人・・・自分が選ばれたのはどのくらいの確率だろう?
偶然で片付けていいものなのか?
あの「声」・・・スピーカーから流れて来た声は言った。
「殺しあえ」
あの悪魔のような声。
あれを聞いた瞬間自分は震え上がるのを感じた。
恐怖?畏怖?畏敬?
どれとも付かぬ感情が体を駆け巡った。
「人を殺す」
その行為自体は経験したことが無いわけではない。
どうしても捨てておけぬ悪人を殺したことはある。
しかしそれは神のためであり正義のためである。
あの声が言ったことはつまり
「生き残りたければ虐殺せよ」
自分はこれまで献身的に生きてきたはずだ。
自分の信念とは真逆のこと・・・。
「怖い・・・神様・・・」
自分は・・・こんなところで死んでいい人間であるはずが無い。
そうだ、死んでいいわけがない無い。
神に選ばれた自分が・・・。
「・・・そうか」
頭にひとつの考えが浮かんだ。
そうだ神が間違いをするわけが無い。
ここに自分がいるのは・・・そう、試練だ。
自分が本当に選ばれたものなのか図るための神の試練。
そうだ、そうに違いない。
とすればあのスピーカの声は・・・神の意思。
ああ・・・自分はなんと愚かなのだろう・・・神の声をよりにもよって悪魔などと形容するとは・・・。
どうかしていたに違いない。
「神よ・・・無知故の無礼をお許しください・・・主の与えたもうた試練・・・謹んでお受けします」
祈りを始める・・・。
この祈りが終わったとき・・・自分は試練に出向く。
必ず・・・超えてみせる・・・自分は選ばれたものなのだ。
人の気配がする。
研ぎ澄まされている・・・絶好調だ。
自分の武器は「当たり」だ。
これ以上の武器はこのゲームにおいてそうはあるまい。
やはり神は・・・自分の味方だ。
・・・・・・・・祈りは・・・・・・終わった。


「伽耶・・・さがっててくれ」
ヒーローは緊迫した声で言った。
「え?」
「人の気配がする・・・悪魔じゃない、参加者だ」
既にヒーローは鉄パイプを構えている。
「出て来い・・・とっくに気づいてるよ・・・こちらにやりあうつもりは無いそちらに敵意が無いなら何もしない」
ヒーローの声が響いた。
次の瞬間。
何かが光った。
「うあっ!?」
ヒーローは即座に反応するが左腕にかすった。
血がぽたぽたと流れ落ちる。
「ふふふふ・・・誰かと思えば・・・ヒーロー君じゃないですか・・・後ろにいる子はヒロインさんじゃありませんね」
光の走った方向から男が現れる。
長髪に痩躯の体・・・片手には銃を持っている。
間違いない、今撃った男だ。
「・・・ロウヒーロー」
ヒーローは男の名をつぶやいた。
そう、男はヒーローのかつての仲間。
そして袂をわかつた男。
献身的な精神と魔法の能力を持つ男。
ロウヒーローその人だった。
「そうですよ・・・久しぶりですね」
「お前は・・・」
目が・・・違う。
昔の献身的な目をしていた彼ではない。
狂気に取り付かれている。
この男は自分を・・・。
「昔のよしみです・・・楽に・・・殺してあげますよ」
殺しに来ている。
「伽耶!逃げるぞ!」
ヒーローが叫んだ。
次の瞬間再度銃から光が走る。
先ほどまでヒーローがいた地面に穴が開いた。
「はははははは!!すごいでしょう!この銃!ジリオニウムガンて言うんですよ!弾丸がいらない光線中・・・」
「つまり絶対に弾切れしないんですよ!逃げられますかね?女の子ずれでぇええええええええ!!」
ロウヒーローが叫んだ。
再び銃を乱射する。
その時。
「ジオンガ!」
「うっ!?」
ロウヒーローの体に電撃が走った。
ダメージはほとんど無い。
だが体が痺れて動きが一瞬と待った
「スクンダ!」
「!?」
次に飛んできたのは一時的にすばやさを下げる魔法。
ロウヒーローが振り向いた。
その先にいた魔法の出所、それは妖精ピクシーと地霊ブラウニー・・・ヒーローの仲魔だった。
「下級悪魔がぁああああ!!」
怒声と共にロウヒーローは二匹に銃を向ける。
「RETURN!」
発射される前に二匹は姿を消した。コンピュータに戻ったのだ。
ロウヒーローが一人取り残される。
ヒーローは気配を感じた段階で仲魔を召喚、迂回させ見えない位置で待機させていた。
ヒーローとて大破壊を乗り越え生き抜いた悪魔使い、備えは万全であった。
「フフ・・・ククククク・・・ハハハハハハハハ・・・さすがはヒーロー君・・・でもねぇ・・・」
「こんな小細工をするってことは!今のヒーロー君じゃあ僕に勝てないって!自分で言ってるようなもんなんですよぉおおお!!」


「あの人追ってきていますか?」
走りながら伽耶がたずねる。
「舌噛むよ、喋らないほうがいい・・・大丈夫、あの手の魔法に威力は関係ない、時間は稼げたはずだ」
言いながらヒーローはGUMPを展開しピクシーとブラウニーに帰還を確認する。
次に召喚コマンドを打ち込む。
<妖鳥召喚・・・ハーピー・・・・GO!>
画面に六亡星が現れ鳥型の悪魔が目の前に現れる。
「どうしました・・・ヒーロー様」
鳥型の悪魔、ハーピーはヒーローに尋ねる。
「伽耶、正直言ってロウヒーローは強い・・・あいつは魔法も使える上にあの武器だ、正直守りきれない・・・そこでだ」
ヒーローは早口で続ける。
「ハーピー、伽耶をつかんで・・・あのビルの屋上に行ってくれ、安全になり次第GUMPを通して連絡する・・・いいね伽耶」
「ヒーロー様のためでしたら・・・」
「・・・わかりました・・・どうか死なないで・・・」
ハーピーはそういうと足で伽耶の片をつかむと飛び上がる。
「っ・・・」
伽耶から声が漏れた。
「痛かったですか?申し訳ありませんが私こういうつかみ方しかできませんの・・・」
「い、いえ・・・大丈夫です」
「ほほほ・・・そうですか、ヒーロー様の命です、あなたはなんとしてもお守りいたしますわ」
そんな声もだんだん遠くなる。
「さて・・・これからだな・・・」
撃たれた左腕の止血を済ますとヒーローはつぶやいた。
ロウヒーローは確実にゲーム乗っている。
ほおって置くわけには行くまい。
「あいつと戦うのは・・・2度目か・・・」
ヒーローはかつてロウヒーローを自身の手で殺している。
名簿にロウヒーローとカオスヒーローの名前を見たとき、伽耶の生まれた時代を聞いたとき。
いろいろな時空から参加者を集めていると気がついた。
あのロウヒーローはおそらくメシアとして転生した直後のロウヒーローだ・・・交渉は・・・通じまい。
ザ・ヒーローは覚悟する。
最悪の場合再びかつての友を殺す覚悟を・・・。



【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:疲労 左腕に傷、応急手当済み
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ インストールソフト×3
道具:マグネタイト1200(使用により減少)
仲魔:妖精ピクシー 地霊ブラウニー始め10匹(ただし妖鳥ハーピーを伽耶に付けているため実質9匹、同時召喚は4匹まで)
現在地:青葉区
行動方針:戦力の増強 ロウヒーローの迎撃

【ロウヒーロー(真・女神転生)】
状態:ごく少量のダメージ スクンダによりすばやさ減少(時間経過で解除)
武器:ジリオニウムガン
道具:?
現在地:青葉区
行動方針:ゲームに勝ち、生き残る ヒーローの殺害

【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:疲労
武器:スタンガン 包丁
道具:無し
仲魔:妖鳥ハーピー(但しザ・ヒーローの使役、そのため伽耶の命令を聞くかは定かではない)
現在地:青葉区
行動方針:ザ・ヒーローについていく

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