女神転生バトルロワイヤルまとめ
第20話 誕生そして再開

走る。
動きが鈍いのがもどかしい。
先ほど受けたスクンダのせいだ。
だがこんなものすぐに効果は消える。
ヒーロー君の出した仲魔・・・先ほどのピクシーとブラウニー。
いずれも下級悪魔だ。
成るほどさすがはヒーロー君、最小限のダメージですむよう弱い悪魔ながら厄介な魔法を使える奴を選んだようだ。
しかし、僕をけん制するために構えたあの鉄パイプ・・・武器はコンピュータだけのようだ。
そして僕とて仮にもメシアあんな下級悪魔の攻撃魔法を食らったところでたいしたことも無い。
注意すべきは状態異常魔法やンダ系の魔法のみ。
それもあんな下級悪魔では連発はできまい。
「ヒーロー君・・・物事には前座とトリがあります・・・もちろんこれは演劇の話しですが・・・」
体が軽くなる、スクンダが解けた。
軽い、スクンダをかけられる前より軽くなったようだ。
「このゲームは所詮!神が僕のために作り上げた試練という名の演劇でしかない!これがどういうことかわかりますかぁあああああ!?」
速く速くもっと速く。
速く追いつくんだ。
「僕が最初に出会った君はぁぁぁぁあああああ!!僕に殺されるための前座でしかないんですよぉぉぉおおおお!!!!」


ロウヒーローの声が聞こえる。
「あいつがあんな大声を上げるなんて・・・」
ヒーローの知るロウヒーローは落ち着いた人間だった。
まるで人が変わったようだ。
「・・・このゲームの魔力・・・か」
人の心にすむ魔。
それは時として人を蝕む。
献身を重んじ神の法に従う彼にもそれは例外ではない。
「ロウヒーロー・・・確かに現状の戦力は君が上だ・・・だが」
ヒーローは鉄パイプを構えた。
「策はできた・・・悪魔召喚師っていうのは力押しだけでどうにかできるような生き物じゃないんだよ・・・」


見えた。
ロウヒーローの視界にヒーローの姿が浮かぶ
追いつくのには時間がかかるだろうが近距離武器しか持たぬヒーローと銃、しかも弾切れの無い銃を持つロウヒーロー。
どちらが有利かは明白であった。
その状況にロウヒーローは笑みを浮かべる
「ふふふ・・・どうやら狩るもとと狩られるもの・・・立場は決まったようですね・・・ふふふふふふふふ」
ふとヒーローが立ち止まったのが見える。
「おや・・・そうか・・・観念しましたか・・・!?」
そう思ったその時ヒーローが何かを投げた。
ロウヒーローはとっさに防御する。
ガンッという音がした。
「ぐぅ・・・」
ロウヒーローの傍らにはカラカラと鉄パイプが転がっている。
「う・・・腕が・・・この威力・・・この遠投・・・タルカジャ・・・ですか」
ヒーローの傍らには獣の姿が見える。
「あれは・・・魔獣サンキ・・・でしたか・・・久しく見ていませんが・・・下級悪魔ですね」
ヒーローの姿はもう無い。どうやら横のビルに入ったようだ。
「ですが・・・僕の治癒魔法・・・忘れたとは言わせませんよぉおおおお!ディアラマァ!!」
ロウヒーローの手が光を放ち腕に受けたダメージが癒えていく。
しかし。
「治癒魔法が鈍いよぉですねぇ・・・」
今使ったディアラマはいつものディアラマではない。
この回復魔法の出力では大ダメージを負ったとき回復しきれまい。
「しかし仲魔を使うヒーロー君とて条件は同じ・・・・・・立場は変わりません・・・」
ロウヒーローはヒーローの入ったビルへと歩いていく。
「追い詰めた・・・わけではありませんね、飛べる仲魔がいればそれにつかまって移動できますからねぇ」
実は飛べる仲魔は先ほど伽耶に付けたハーピーのみなのでそうではない・・・がロウヒーローが知るはずも無い。
「・・・これは」
ビルの入り口に立って気づいた、入り口が凍らされている・・・いや。
「巨大な氷でふさがれていますね・・・ブフ系魔法ですか・・・これでは入れませんねぇ」
ロウヒーロは銃を構え引き金を引く。
光が走る。
しかし。
小さな穴が開いただけだった。
「おや・・・?そうですか、物を貫通するこのジリオニウムガンでは砕くことはできませんもんねぇええ」
ロウヒーローは叫びながら氷に手をかざす。
「マハザンマァ!!!」
ロウヒーローが叫ぶと手から衝撃波が発生して氷を打ち砕く。
「くくく・・・魔法なら問題なく砕けますねぇ・・・」
ロウヒーローは砕けた氷の破片を踏みにじりながら中に入る。
「ジオンガ!」
「スクンダ!」
入ったと同時に先ほどの2匹が魔法を仕掛けてくる
「ぐぅ!?」
「「RETURN!」」
ロウヒーローが振り向く前に2匹はコンピュータまで戻る。
「下級悪魔の分際でぇえええええ!?」
ロウヒーローは気がついた。
「フフフ・・・エレベーター・・・壊されてますねぇ・・・それに・・・」
ロウヒーロは階段の方に目をやる。
そこは先ほどの入り口と同じように氷でふさがれているおそらくその奥にも何枚も氷があるだろう。
「ふはははははははははは!」
ロウヒーローは高笑いを始める。
しかし顔が憤怒の表情に変わる。
「どこまでも小細工をぉぉぉおおおおおお!?いいでしょう!そちらが小細工というなら圧倒的な力で!」
「あなたを蜂の巣にしてあげますよぉおおおおおお!!!」


階下から叫び声が聞こえる。
「氷に切れてるようだな・・・あいつ意外と激情家だからなぁ・・・それですむレベルじゃない気もするけど」
ヒーローは既に最上階まで上っていた。
「ヒホホー・・・もう駄目ホー・・・」
最後の氷を張り終わったジャックフロストが倒れる。
「ご苦労様、ありがとうジャックフロスト・・・COMPに戻って休んでてよ」
ヒーローがジャックフロストに声をかける。
「ヒホ・・・ヒーロー、聞きたいことがあるホ」
「ん?」
「ヒーローは合体で戦力を増強するつもりなんだホ?」
「・・・うん」
「気にしなくていいホ。オイラ達が弱いのはわかってるホ」
「それにヒーローの仲魔になったのはそうされてもいいと思ったから仲魔になったんだホ」
「・・・・・」
「だからお願いが有るホ」
「え?」
「最初の合体は・・・オイラとランタンで合体させて欲しいホ」
「君と・・・ランタンで?」
「そうだホ、ランタン役に立てそうに無いって悩んでたホ」
ジャックランタンはジオやブフなどのような追加効果の無いアギ系しか持たない。
圧倒的に戦力の高いロウヒーローを迎え撃つ際それは致命的だった。
「それは・・・」
「ヒーローがいい奴だってのはみんなの気持ちホ、役に立てなくて悔しいのはよくわかるホ・・・だから」
「フロスト・・・」
「だから合体で役に立つホ、お願いホ」
ヒーローはそっとジャックフロストの頭をなでる。
「わかった・・・ありがとう・・・MAGの都合でみんな呼ぶことはできないけど・・・」
「ヒホヒホ、ランタンにも他のみんなにも伝わってるはずだホ」
フロストが嬉しそうに笑う。
「じゃあオイラは戻るホ、バイボイホー」
そういってフロストはコンピューターに戻る。
「・・・生き残らなくちゃな」
そういうとヒーローは部屋に入る。
ロウヒーローを迎え撃つ最後の仕上げのために・・・。


「フーフー・・・また・・・氷ですか・・・マハザンマぁ!!」
氷が砕け散る。
今のを入れて15枚。
すなわち15発マハザンマを撃ったことになる。
その疲労はどんどん蓄積されていく。
「ふーふー・・・マハザンマは・・・後一発が限界って所ですか・・・」
ロウヒーローは息を荒げている。
螺旋階段を上り折り返す。
また氷が有る。
ロウヒーロは歯軋りをする。
しかし透き通って見える氷の向こう。
「やぁ・・・お疲れのようだね、ロウヒーロー」
ヒーローだ。
「氷はこれで最後だよ・・・とっとと割ったらどうだい?僕を殺したいなら・・・」
そういってヒーローは部屋の中に入っていった。
「フフフフフフフフ・・・ククククククク・・・・マハザンマァ!」
最後のマハザンマと引き換えに最後の氷か破壊される。
それを乗り越えヒーローを追う。
角を曲がりヒーローの入った部屋に入る。
「追い詰めましたよぉぉおおおおおおおおお!?ヒーローク・・・!?」
瞬間。
ロウヒーローの銃を持った手を何かが高速で打ち据える。
「ぐぅ!?」
銃が床に落ちる。
「アドバンテージは無しだだね・・・ロウヒーロー・・・」
ヒーローの鉄パイプだった。
奥に言ったと見せかけ曲がり角の死角で気配を消す。
初歩的な奇襲だが激昂したロウヒーローには効果覿面だった。
「今度有利なのはこちらだよ・・・魔法の連発でお疲れのようだ・・・その上こちらはタルカジャスクカジャともに限界までかかってる」
ヒーローが鉄パイプをロウヒーローに向ける。
「殺す気は無い・・・ただちょっと・・・気絶してもらうだけさ」
「フフフフフフフフ・・・あなたは・・・何時も何時も中途半端だ」
ロウヒーローが何かを取り出し地面に打ち付ける。
とたんに煙があたりを包む。
「煙幕弾!?・・・・ぐっ!?」
通常逃走のために使用するそれを地面に打ち付けた。


煙が・・・はれた。
そこには。
銃を突きつけられたヒーローとヒーローの上で銃を構えるロウヒーローの姿があった。
ロウヒーローが口を開く。
「あの隙に銃を弾くだけで頭を砕くことをしない・・・かといって他人のために死ぬ気にもならない・・・ほんとに中途半端ですよ、あなたは」
ロウヒーローの銃が光る。
「ぐぁああ!?」
打ち抜いたのは右腕・・・握っていた鉄パイプが転がる。
「最初僕・・・昔のよしみで楽に殺してあげるって言いましたよねぇ・・・アレは撤回します」
再び、光。
「うぁああああ!」
今度は左腕に風穴が開いた。
「散々コケにしやがってぇえええええええ!!!じわじわとなぶり殺してあげますよぉおおおおお!?」
次に肩に風穴

「両肩ぁああああ!次に両足ぃいいいいいい!!その次は腹ぁあああああ!さらに目ぇえええええええ!」
「僕が満足して脳漿をぶちまけるまでぇええええ!恐怖と痛みにのたうちまわれぇええええええ!!」
「はぁはぁ・・・ふっ」
ヒーローがにやりと笑った。
「何がおかしいぃぃいいいいい?!怯えろ!怯えて僕を満足させろぉおおおおお!?」
「気が付かないか?悪魔召喚師が・・・コンピューターを持っていない・・・何かあるかと思わないか?」
先ほどのヒーローの手には鉄パイプのみ。今も、体のどこにもGUMPは無かった。
「右を見てみな」
ロウヒーローが右を向く。
次の瞬間。
黒い巨大な影。
それがロウヒーローの左側から襲い掛かった。
「ああ・・・ごめん、僕から見て右だったよ」


「最初は悪魔の現れた日、2回目はTDLに向かうあの日・・・」
ロウヒーローを襲った黒い影。
それは今もロウヒーローを押さえつけている。
「なっなっなっ・・・何でこいつがここにぃいいいいいいい!?」
それは・・・。
「君に助けられるのは3回目だね・・・ありがとう・・・まさか君が来てくれるなんて・・・久しぶり、パスカル」
青いたてがみを持つ地獄の番犬。
ケルベロスだった。
「グゥ・・・ヒーロー・・・コイツハ・・・死ハズデハ・・・」
ケルベロスが尋ねる。
「説明は後だ・・・さて・・・ロウヒーロー・・・実は僕は・・・あるものを探してここに入ったんだ・・・君を迎え撃つためじゃない」
ケルベロスの現れたほうにあったもの・・・それはノートパソコン・・・。
「詳しい説明は省くけど・・・強力な仲魔を作るためには・・・パスカルが来てくれたのは嬉しい誤算だけど・・・パソコンが必要だった」
ザヒーローのインストール作業は既に完了していた。
銃創もガリバーマジックにより非常にゆっくりとではあるが回復しつつある。
「でも町はこんなだ・・・電源があるかどうかもあやしい・・・ところでこのビル・・・何の会社か知ってるかい?」
「キャスメット出版・・・出版社だ」
「当然記者だっているだろう、となれば当然ノートパソコンは必需品・・・予備電源と共にね」
「もくろみはあたったよ・・・さよなら・・・ロウヒーロー・・・パスカル、頼む!」
「ガゥ!!」
ヒーローの支持と共にケルベロスが爪を振り上げる。
瞬間。
「トラフーリ!!」
脱出呪文。
ロウヒーローのおそらく最後の魔力。
その呪文は・・・成功した。
既にケルベロスの前にロウヒーロウはいない。
「グゥ・・・スマン・・・逃ゲラレタ・・・」
「・・・まだ魔法が使えたなんて」
「・・・追ワナイノカ?」
「いいよ・・・もともとぼくから殺しにいったわけじゃない・・・それに迎えに行かなきゃ・・・仲間がいるんだ」
「ソウカ・・・ヒーロー、俺ノ背中ニ乗レ・・・銃創ガ痛イタムダロウ・・・」


ヒーローは屋上の扉を開ける。
ここに伽耶とハーピーがいるはずだ。
「伽耶・・・?・・・どこにいる?伽耶・・・」
ヒーローが一歩踏み出す。
妙な感触がした。
ヒーローが下を見る。
「!?」
髪の毛だ。
ヒーローの足の下には無数の髪の毛が散乱していた。
「ヒーローさん?」
後ろから伽耶の声が聞こえる。
ヒーローが振り向くとそこには長かった髪がばっさり切られた伽耶がいた。
「よかった・・・無事だったんですね」
伽耶がヒーローに近づく。
「あっ・・・この髪ですか?やっぱり包丁じゃ切りづらいですね・・・変じゃないですか?」
「え?ああ・・・似合ってるよ」
「私が切ってあげましたの・・・」
ハーピーが後ろから現れた。
「私・・・少しでもヒーローさんの足手まといにならないようにって思って・・・気休めですけどね・・・」
伽耶が少し笑顔になった。
「・・・うん、休んでる暇も無い・・・速く青葉区から出よう、インストールは終わったよ・・・ノートパソコンと変えのバッテリーも貰ってきた」
新たな仲魔を得て再び二人は動き出す・・・天秤は今だ揺れず・・・しかし別の何かが・・・動き始めた。



【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:疲労 負傷(両腕と右肩に銃創、但しガリバーマジック効果と仲魔ディアによりほぼ回復)
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み)
道具:マグネタイト700(使用により減少) ノートパソコン 予備バッテリー×3
仲魔:魔獣ケルベロス、妖鳥ハーピーを始め9匹
  (ジャックフロストとランタンの合体事故によりケルベロス誕生 他も合体予定)
現在地:青葉区から離脱中
行動方針:戦力の増強 青葉区より離脱

【ロウヒーロー(真・女神転生)】
状態:爪あと、鉄パイプなどによる軽症 疲労大 現在魔法使用不可
武器:ジリオニウムガン
道具:煙幕弾×9(ひとつ使用)
現在地:青葉区(逃走中)
行動方針:ゲームに勝ち、生き残る 体力の回復

【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:疲労 髪の毛を切る
武器:スタンガン 包丁 
道具:無し
仲魔:無し
現在地:青葉区から離脱中
行動方針:ザ・ヒーローについていく


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