女神転生バトルロワイヤルまとめ
第23話 集う仲間達

どれだけ走っただろうか?
英理子はただあの場所から離れることだけを考え、ペルソナによって速度を上げながらひたすら逃げ続けた。
リサの最期と千晶と呼ばれていた少女の姿が頭から離れない。
蓮華台を通り、夢崎区から最も離れた港南区の通りまで来たところで、英理子はようやく落ち着きを取り戻した。
ここまでくれば、もう追いつかれないはず。
実際は英理子が見えなくなった時点で追跡は止まってあたのだが、恐怖心が彼女をここまで走らせた。
心臓が早鐘を打ち、ペルソナを連続で使った疲労が全身に重くのしかかっている。
何より、リサを助けられなかった自分の無力さと罪悪感が英理子を責め苛んでいた。
(Maki…Kei…Naoya…)
彼らに会いたい。彼らならきっとこの痛みを理解し、励ましてくれるだろう。
しかし、彼女の目の前に現れたのは仲間達とは程遠い存在だった。
「ククク…人間かぁ?殺してやるよぉ!」
真っ赤な肌に、頭から突き出た一本の角。日本古来の悪魔オニ。
投げられたナタを、英理子はとっさに避けた。
ナタは背後にあった信号にあたり、信号は大きな音をたてて倒れる。
英理子は急いでペルソナを発動し、応戦しようとした。
しかし…
(もういい…もう、どうでもいい)
一度は上げた腕を、静かに下ろす。
同じヒトに殺されるぐらいなら、悪魔に殺された方が幸福かもしれない。
もう、誰かが殺されるのも、誰かが殺そうとするのも見たくない―
オニは手に戻ってきたナタを振り上げ、襲い掛かる。
「何をしてる!右だ、右に避けろ!」
どこからか声が聞こえ、思わず英理子はその声に従って避けた。


オニの追撃をうまくかわしつつ、英理子は声の主を探すが、周りに人影はない。


「全く…なぜ力を使おうとして止めた?あいつでもそんな馬鹿な真似はしないぞ。」
黒い毛皮と緑の眼、子猫の姿をしたゴウトは英理子の戦いを見ながらつぶやく。
「どこを見てる、ここだ、塀の上にいる!」
声の主を探す英理子に呼び掛ける。その声は声帯から出ているものではない。
テレパシーによって頭のなかに直接話し掛けているのだ。
「い、いや、やっぱり見るな!相手の攻撃に集中しろ!」
ゴウトの姿を見て驚きを隠せない様子の英理子に、戦闘に専念するよう促す。
その背後から、一羽の巨大な鳥が躍り出た。
突然だったため、ゴウトにはうまく対応しきれない。
英理子の方も疲労のためかうまく体が動かず、わずかな隙ができた。
―殺される
一人と一匹が同時に思った、その瞬間だった。
「ブリザー!」
「ペルソナ!」
同時に声がした。
そして、オニはその背後から放たれた冷気によって一瞬にして凍り付き、怪鳥は正装をした猫の爪によってばらばらに引き裂かれた。
「君、大丈夫か!?」
克哉はへたりこむ英理子に駆け寄り、無事を確認する。
「頭を怪我しているようだな。白鷺君、回復を頼む。」
白鷺も二人に近寄り、回復魔法によって英理子の傷の治療をする。
この世界では回復魔法の効果が減少するようだが、軽傷だったためすぐに治すことができた。
「道具なしに悪魔を召喚したり、魔法を使えたり…よくもまあ色々と揃ったものだ」
その声に克哉と弓子は振り向き、驚愕した。
「ね…猫がしゃべった…?」
「…悪魔やら魔法やらを見てきて、今更話す猫程度で驚かないで欲しいものだな」
ゴウトが嘆息して言う。


「さて…何から話すか…」
英理子にも拳銃と防弾チョッキを渡し、ロビーに戻った三人と一匹はとりあえず名前を教えあった。
英理子の名前を聞いて克哉は驚いたが、それぞれのいた世界について話してからでも遅くないと思い、口を挟むことはしなかった。
「待て。話を始める前に、お前に一つ聞きたいことがある。」
ゴウトは英理子に向かって言った。
「…私に?」
「ああ。さっきの戦いの始め、なぜ力を使おうとして止めた?あのときのお前は、死のうとしているように見えた。」
「本当か?桐島君」
ゴウトの言葉に克哉は少し衝撃を受けた。元の世界で共に戦った彼女の印象を思うと、死のうとするなど考えられなかった。
「ええ、私は…死んでもいいと、No、死にたいとすら思っていました…」
英理子はゆっくりとこの世界に来てからのことを話し始めた。
リサとの出会い、千晶の襲撃、リサの死…

「…私のせいで、Lisaは…」
あの時もっと早く開扉の実を使っていれば、千晶の反撃の前に追撃を行い、しとめていれば…
「それは違う。君のせいじゃない。僕達がいくらこう言っても、優しい君は自分を責めてしまうのだろうな…」
悲壮な表情で英理子の話を聞いていた克哉がゆっくりと口を開く。
「しかし、死を選択するのは間違っている。もし今でも死にたいと思っているなら、その命を僕に預けてほしい。
もうリサ君のような犠牲者を出さないためにも…力を貸してほしいんだ」
「Mr周防…」
「私も、刑事さんと同じ気持ちです。」
静かに話を聞いていた弓子が口を開く。
「英理子さんが死んでも、リサさんは絶対に喜ばない。最後まで帰るために戦おうとしたリサさんの思い、どうか受け継いでほしい…」
「Yumiko…」
「どうだ、ここまで言われてはまだ死にたいなどとは言えないだろう。」
ゴウトが英理子に近づき、喉を鳴らした。
「死は安易な逃げだ。何の解決にもならないぞ?」
「…ええ。ありがとう、皆さん。私、どうかしていましたわね。」
英理子は顔を上げ、ゆっくりと微笑んだ。これだけ自分を気遣ってくれる人(+猫)がいる。
(Lisa…見ていてくださいね
)心の中で友人に誓いを立てる。
もう二度と、絶望しない。先にあるのがなんであろうと、立ち向かい続けよう。



【桐島英理子(女神異聞録ペルソナ)】
状態 疲労、精神的には安定を取り戻す
降魔ペルソナ ニケー
所持品 拳銃、防弾チョッキ(他は夢崎区で全消費)
行動方針 仲間との合流
現在地 港南警察署

【ゴウト(超力兵団)】
状態 正常
所持品 なし(持てない)
行動方針 ライドウとの合流
現在地 港南警察署

【周防克哉(ペルソナ2罰)】
状態 正常
降魔ペルソナ ヘリオス
所持品 拳銃、防弾チョッキ 鎮静剤 (ボウガン破壊)
行動方針 主催者の逮捕 参加者の保護
現在位置 港南警察署

【白鷺弓子(旧女神転生1)】
状態 正常
仲魔 ミズチ
所持品 アームターミナル、MAG2000 拳銃 防弾チョッキ
行動方針 中島朱実との合流
現在位置 港南警察署

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