女神転生バトルロワイヤルまとめ
第29話 ナオミの場合

「ここは…」
気がつくと、ナオミは無人の建物の中にいた。
機械の稼動音と、様々な工具。それを照らす蛍光灯も正常に働いている。
「…ここは…工場?機械類は作動しているようだけど…」
出口は――扉がある。手をかけて開けようとするも――
「…開かない。」
良く見れば、扉から配線が伸びて――モニターとレバーの方向へ繋がっている
「…電子ロック?…これは…アルゴン製じゃないわね…かなり…古いもの…」
電源らしきスイッチを入れると、あっさりとOSが立ち上がった。
「説明書があれば…何とか…なりそうだけど…使いにくいインターフェースね…」
棚の中に色とりどりの「取り扱い説明書」が収納されているので、
コントロールができなくて閉じ込められる、という事態に陥る事はなさそうだが…
(…果てしなく面倒だわ…「扉の開閉」の記述を探すだけで何時間かかるのかしら…)
(…まあ…開かない、と言う事は外からも入れない、ということで…)
「まずは…」

「主催者」から渡された『支給品』、そして『ルール』。
鞄の中のものを机の上に並べて、まずは確認してみる事にした――


「…ナニコレ」

何かの…飲み物と…杯と…日傘。
「お酒?…ビャッヘーって何だろう…」
(…ちょっとだけ…)
「…甘い…これは…蜂蜜酒?…結構、いけるかも…」

杯を傾けつつ鞄の中を探り、ルールの紙束に目を通す。

「呪印…」
気に入らない。

見事ゲームに勝ち残ったとしても、主催者が誠実である保証は何もない。
最悪、願いをかなえた後も呪印だけ残して保険とする、などと言うケースも十分考えられる。
主催者と相対するまでには、何とかして無効化しておきたいところだが…

(…どの系統の呪術か…わかればいいんだけど…)
何気なく手首に目を移す。一般の紋様とは違う、特別の呪的意匠を施した刺青。
修行を終えた時半ば強制的に付けられた証であったが、これのおかげで一縷の望みが持てる。
(何の理に依って成された呪術かわかれば、これを使って無効化できるかもしれない。)
自分が呪詛を付けられるような間抜けな目に合うはずがない―――
そう考えていた今までの自分の愚かさを思い知り、刺青を強いた師の笑顔が脳裏をよぎる。
(ウチナーかヤマト系統なら呪詛返しも簡単だけど…)
呪印の形からして、西洋…あるいは中近東の神か悪魔が関わっている可能性が高い。
神のいる場所、神社、寺、教会――に出向き、それと同格以上の神々の助力を得るか。
それとも悪魔の出現場所に乗り込み、高位の悪魔と契約するか――
どちらにしろ、新たな契約のために大がかりな儀式や代償が必要になる。
では、まず何から…

考えを纏めようとするが…なぜか集中できない。
(…あれ?そんなに飲んではいないはずなんだけど…)
酒瓶には、まだ9割ほどの酒が入っている。ナオミとしては、全く問題のない酒量のはずだが…
(ほとんど残っているようだし…残っている…思ったほど減らない…減らない…)
「…無限に減らない。」
やってしまった。確認もせず、支給品の酒を飲み干して見事に酔っ払って――実に

いい気分だ。

気になっていた日傘に手を伸ばし、意味もなく回転させてみる。
描かれた文様が神の旋律を奏で、自分を祝福してくれているような、そんな気がした。
「…ええと…この日傘、どこかで見たような…」
日傘と酒…この2つがナオミにとってどのような意味を持っていたのか。
「…マヨーネ」
記憶の糸が繋がり、かつて相対したサマナーの姿が浮かんだ――
これはCOMP…それも戦闘に十分耐えうるサマナー用だ。
(…どうするんだっけ…たしか、マヨーネが召喚する時には…)

左手で傘を開き、右手を天高く突き上げて悪魔の名を叫ぶ――

「ムラサキカガミ!」

「…」
「…駄目ね…うふ、ふふふ…駄目ね…ふふ…」
自らの滑稽さになぜか笑いがこみ上げて来る。いつになく楽しい気分――
「そもそも仲魔が入ってるかどうかもわからないのにね…ふふ…」
とりあえずこの傘の件は後回しだ。傘を閉じて、制御室のコントロールパネルと向き合う。

「…何にせよまずはここを出て…情報を集めることね…」
人か、あるいは「悪魔」から。もしかしたら「主催者」からも――
ナオミはリストの一点、レイ・レイホゥの名に視線を落とし、何かに言い聞かせるように囁いた。

「…知ってる名もあるようだし…ね。」


時間:午前5時ごろ
【ナオミ(ソウルハッカーズ)】
状態 酔い(Happy)、エストマ
武器 なし
道具 日傘COMP 黄金の蜂蜜酒 酒徳神のおちょこ
現在地 廃工場(制御室)
基本行動指針 呪印を無効化する 情報を集める レイホゥを倒す
現在の目標 制御室を出る

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