女神転生バトルロワイヤルまとめ
第31話 脱出への挑戦! 壱

ライドウと鳴海、そしてレイコは支給品のパンと水で簡単な朝食を済ませ、歩みを進めながら今後のことを話し合った。
先頭は脇差を持っているライドウである。刀での一撃必殺が得意な彼が先頭に立てば急な襲撃に備えられる。
その後ろを行くのはレイコだ。
彼女は、本人こそ使いたがらないがいくつかの攻撃魔法の心得があるらしい。
鳴海の読み通り、彼女の背後にはガーディアンと呼ばれる神が憑いていると言う。
だから前後どちらから攻撃されても応用が利くのである。
そしてしんがりは鳴海だった。
これは格闘技が出来る彼を最後尾にすることで、バックアタックを阻止する為だ。
念のため、唯一遠距離攻撃が可能なクロスボウは彼が持つことになった。
昨晩の内にライドウは、時代も世界も違う自分たちがどうやってこのスマル市に集められたのかを推理し、
此処から脱出出来る可能性のある方法を思いついていたのである。
方法は以前も使ったことがあることだった。
異界開きをして、異界経由でこの街からの脱出を図るのである。
これならたとえこの街が地上から遥か上空に浮いていようが、
此処が自分たちの元いた大正帝都でなかったとしても問題は無い。
だが、異界開きをするとなると、それ相応のエネルギーが必要になってくる。
帝都からアカラナ回廊へ飛んだ時に使用した、
天津金木に匹敵する強大なエネルギーを秘めているような聖なる道具が…。
しかし、この殺戮ゲームの為だけに住民を全て追い払い、
尚且つ交通機関はおろか、電気も水道も止められているこの街で、
そのような都合の良い道具があるものなのか。
こんな時ゴウトがいたら…。
ライドウは深く溜息をついた。


ゴウトと離れ離れになってしまったのはかなり大きいダメージだった。
彼さえいれば、何か良い知恵を出してくれるかもしれない。
自分が最も頼りにしている師匠にして相棒、そして親友でもある黒猫のゴウトドウジ。
それに昨晩ライドウが暴走するのを真っ先に止めてくれていたはず…。心が痛んだ。
「あのさぁライドウ、レイコちゃん。」
後ろを歩いていた鳴海が空を見上げながら前の二人に話しかけた。
「何でこの街って空に浮いてるのかな?」
素朴な疑問である。
だが、鳴海と同じ時代から突然召還されたライドウがその疑問に答えられるはずが無い。
そしてレイコも首を横に振った。
だがライドウは「それだ!」と言わんばかりに手を打った。
「どうしたライドウ?」
「それですよ鳴海さん、さすが探偵を名乗るだけあって冴えてますね。」
珍しく嬉しそうに褒めるライドウ。鳴海はまんざらでも無い様子で後ろ頭を掻いた。
しかし一体どういうことなのだろう。
この街が宙に浮いていることと、此処から脱出する方法に何の因果関係があるというのだろうか?
「この街が一つ丸ごと宙に浮いているということは、それを浮かせている動力源があるはずです。
地図で見たところ、このスマル市はそれなりに大きな街でしょうから、かなり巨大なエネルギーで支えていると思うんです。
そのエネルギーを使えばあるいは…。このゲームの参加者全員を異界ルートで脱出出来る可能性すらあるかもしれないんです。」
「そうか! そう言う事か! お前頭いいな!」
「いえ、鳴海さんのヒントがあったからこそですよ…。」
そう言って子供の様にお互いを褒め合う鳴海とライドウだったが、冷静なレイコが口を挟んだ。
「でも、その動力源って一体何処にあるんですか?
それに解ったとしてもどうやってそこまで行くのかが解らないことには…。」
確かにそうである。
あまりにも途方の無い作戦の上で、今の彼らはあまりにも無力だった。
街を浮かせているエネルギーを使うにはあまりにもこの街を知らな過ぎる。
それに、仲間に引き込むのが不可能としか言えない敵の存在もあった。奴らが妨害して来ないとは限らないのだ。
だが、折角見つけた脱出への希望だ。それを無駄にする訳には行かない。
「そうだな。けど主催者の奴が言ってただろ? 『この中にはこの街の出身者もいる』って。
そいつが誰なのかは解らないが、ひょっとしたら何か聞けるかもしれない。」
「それなら解ります。この街の蓮華台という地区にある七姉妹学園という学校の制服を着た人が二人いたんです。彼らならきっと…。」
レイコは空を仰いだ。彼女には確信があったのだ。
集められた教室で数分間見ただけだが、黒を基調に白いラインの入った制服を着た男女。彼らとは何故か自分と近しい何かを感じたのだ。
きっと、こちらの話をちゃんと聞いてくれる…。
「なら話は早い。そいつらを探そう。制服着てるんなら解りやすくていいじゃないか。」
「そうですね。その間にも他の話が通じる相手を見つけて引き込むことが出来れば…。」
「まずはタヱちゃんだな。それから伽耶ちゃん。生きてるといいんだが…。いや、生きてるよな、絶対。」
前向きな鳴海の言い分にライドウも同調した。希望の光が強く輝き始めたような気がしてきたのだ。
だが、そんな二人を差し置いて、レイコの表情は少し曇っていた。


話の通じる相手…。
魔神皇の顔が厭でも頭をよぎる。
あの人は好きであんなことをやってるんじゃない。本当はもっと優しくて正義感の強い人のはず…。
どうしてこんな酷いことをしているのか、彼の眼を見て聞きたい。
互いに向き合って聞いて、それからこんなこと、早く止めさせたい。
いや、止めさせなければいけないのだ。そしてそれが出来るのは自分だけ…。
「レイコさん?」
急に押し黙ったレイコの顔をライドウが覗き込んだ。
乾いた血で汚れているが、はっとする程美しく整った顔だ。だがその眼は心配そうに映っている。
が、急に真剣なそれに変わった。
表情そのものは殆ど動かないが、レイコにはその微かな変化が何を言わんとするのかが解り、俯いて首を横に振った。
「いえ、何でも…」
「僕は、まだ反対してますから。」
「え?」
「魔神皇を説得するなんて無茶苦茶です。貴女が自分で言ったんじゃないですか。勝手に無茶をしないで、と。
だから僕は、絶対に貴女を止めますからね。どんな手を使ってでも。」
「そんな…。」
まだ何か言いたそうなレイコの小さな手をライドウはぎゅっと握った。
その瞬間、戸惑うように小さく震えるのが解ったが、ライドウは決して離さなかった。
「貴女は…こんな所で死んではいけない人なんだから…。」
「……。」

「若いっていいねぇ〜。」
胸ポケットのケースから煙草を一本取り出し、口に咥えながら、二人の後ろを歩く鳴海はそう呟いて肩を竦めた。



【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 脇差
道具 傷薬×2
現在地 青葉区だが蓮華台に向かって移動中
行動方針 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出

【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ 宝玉
現在地 同上
行動方針 同上

【赤根沢レイコ(if…)】
状態 正常
武器 無し
道具 ?
現在地 同上
行動方針 魔神皇を説得 ゲームからの脱出

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