女神転生バトルロワイヤルまとめ
第33話 脱出への挑戦! 参

それが何を意味するのかを悟ったライドウは、何も言わず元来た道を遡ろうとした。
だが、鳴海が翻されたマントの裾を掴んでそれを止めた。
「離してください鳴海さん! このままじゃレイコさんが!」
強力な敵がまたも出現し、レイコの所在が知れなくなった以上、ライドウはどうしても冷静ではいられなかった。
「待てよ! レイコちゃんは大丈夫だから! 絶対逃げ切ってるはずだ!」
「どうしてそんなことが言えるんですか貴方は! さっきの力見たでしょう!?」
それはピアスの少年が発したペルソナという未知の能力のことである。
発動だけはライドウの咄嗟の機転で何とか回避出来たが、あの強力な殺気はただ者では無い。
インドの主神、ヴィシュヌの名は伊達では無いということか…。
ピアスの少年には鳴海が多少のダメージを与えた。
だが同時にライドウもまた、傷を負ったのである。
「だからって、今引き返したらお前まで…!」
「レイコさんを助けないと!」
(やれやれ、こいつゴウトがいなかったらこんなにガキだったのかよ。
……それとも、レイコちゃんのせいか?)
ライドウがこの街にやって来てゴウトと逸れ、それからレイコに出会ってからというもの、
鳴海の知っている彼とは全く別人のような変化が続いている。
無愛想、無口、無表情と三拍子揃っている奴だと思っていたが、それは師匠のゴウトがいたからこその姿だったらしい。
元々少し浮世離れした奴だったから、自分の感情表現が豊かになったことは良い変化かもしれない。
だが、冷静に対処しなければ、それこそ命に関わるこの状況で、こんなに熱くなられたら元も子もないのだ。
「…悪いな、ライドウ。」
鳴海は低く呟くと、今まさにライドウが脱ぎ捨てようとしているマントから手を離し、代わりに負傷した右腕を捻り上げた。
「ぐっ!」
激情に駆られ、忘れかけていた痛みにライドウが顔を歪ませるのも束の間、鳴海はライドウの頬を叩いた。
「お前が落ち着かなくてどうするんだよ。眼を覚ませライドウ! 眼を覚ませ!」
それから鳴海は、ライドウが落ち着きを取り戻すまで何度も、何度も頬を張り続けた。


兎にも角にもようやく冷静さを取り戻したライドウの傷の手当が先決である。
利き腕負傷ではこの先まともに戦うことが不可能だ。
だが、レイコがいない以上、回復には支給された道具を使うしか無かった。
「これは…もしもの時のために取って置いてください。」
一応鳴海の支給品の中には瀕死の重傷をも一発で治す宝玉があったが、それを使うのはライドウが拒否した。
だからライドウの手持ちの傷薬を使っての応急処置で済ます結果になってしまったが、それでも無いよりはましだろう。
ペットボトルの水で簡単にだが、傷口を洗い、傷薬を塗る。
「すみません鳴海さん。手間を掛けました…。」
「まぁ、仕方無いさ。いきなりの事だったからな。」
ライドウが学生服の下に来ているワイシャツを裂いて作った即席の包帯を肩に巻いて、当面の手当てを終了させる。
それから学生服を肩に掛けてやりながら鳴海は続けた。
「それにしてもさっきの奴、あんなに近くまで接近を許してしまってたとは。
休憩中って言っても少し気を抜きすぎてたな。」
「……。」
鳴海がどうなのかは知らないが、少なくともライドウは気を緩めていたつもりは無かった。
自分から立ち入る隙を作っていたとは思えない。
と、言うことはつまり、あのピアスの少年は完全に気配を殺した上で、ライドウたちに接近し、襲い掛かってきたということである。
一体彼は何者なのか。だが少なくとも自分たちの味方では無いということは確実である。
「いずれ…また戦うことになるかもしれないな。」
再び咥えた煙草に火をつけながら、遠い眼をしてそう言う鳴海に、ライドウはゆっくりと頷いた。
ライドウは既に覚悟を決めていた。
少し前までは誰も殺したくは無い。出来るだけ多くの人間を説得して脱出を試みるつもりで行動していたが、
だがそれは自分で思っていたよりも、遥かに甘い見通しであるということをたった今痛感したのである。
危険な敵はあのピアスの少年だけではない。魔神皇もしかりだ。
おそらく他にもまだいるのだろう。
「次は僕も本気で…斬ります。たとえ誰かを殺す結果になっても、守らなくてはならない人がいるのだから…。」



【葛葉ライドウ(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 顔と右肩を負傷
武器 脇差
道具 無し
現在地 蓮華台に向かう山道
行動方針 レイコを探す 信頼出来る仲間を集めて異界ルートでの脱出

【鳴海昌平(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態 正常
武器 メリケンサック クロスボウ
道具 チャクラチップ 宝玉
現在地 同上
行動方針 同上


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