女神転生バトルロワイヤルまとめ
第38話 殺意の渇き

夢崎区
スマル市一の繁華街でいわゆる若者の町である。
どころどころにネオンが見えているが電力という文明の利器を失った今それが光ることは無い。
きらびやかな衣装が飾ってあったと思われる窓ガラスも今は割られ滅茶苦茶にされている。
以前は多くの人でにぎわっていた歩道も今はもう誰もいない。
死の町。
ありがちな表現を使えばそんなところだろうか?
「・・・さて、夢崎区に入ったが・・・どうやって探すつもりだ?」
大道寺伽耶は尋ねた。
「まさかがむしゃらに探すわけにも行かないだろう?」
「その話は後だ、まずはやることをやらなきゃね」
ヒーローが答えた。
当然二人は道の真ん中に堂々と立っているわけではない。
店と店の間の小さな路地、ひとつ間違えば麻薬などの裏取引が行われてもおかしくないような場所だ。
「いくつか調達したいものがある・・・さしあたってはあそこ・・・かな」
ヒーローが指差した先、それはスポーツ用品店だった。

スポーツ用品店に入り、双眼鏡を二つと店内に散乱している衣類を数点確保する。
確保した衣類をできるだけ大きい道路の真ん中に放置する。
ついでにへし折ってきた街路樹の枝も置く。
「・・・これをどうするんだ?」
伽屋は怪訝そうな顔で尋ねた。
「まーまー、成功率が高いとは言わないけどやってみる価値はあると思うよ」
そんな伽耶を尻目にヒーローはGUMPを操作するとケルベロスを呼び出した。
「ヒーロー、ナンノヨウダ?」
「とりあえずこの近くのどこかに隠れておいてくれ、指示は追って出す」
「・・・ワカッタ」
「たのんだよ、パスカル・・・伽耶、行こう」
手早くパスカルに指示を出すとヒーローは駆け出した。
「ああ、いつまでもこんなところにいるわけには行かんしな」
伽耶もそれに続いた。


伽耶とヒーローは先ほどの場所から近すぎず、遠すぎず・・・それでいて一番建物に潜伏していた。
「ここがいいかな・・・さっきの場所も回りも良く見える」
ヒーローが窓のそばにたった。
「いい加減どうするのか教えてもらえないか?」
「・・・そうだね、これからパスカルに頼んであの衣類に火をつける」
「火を?」
「ああ、アクリル製のものも混ざってるからよく燃えるだろう」
「・・・?それでどうするんだ?」
「そうすればあそこに何かあるとは思うだろう・・・見に来るか?敵がいると見て逃げるか?あるいは動くのは危険ととどまるか?」
「なるほど・・・それを双眼鏡で探すと?」
「そういうこと・・・とどまる人間はともかく前者二つは見つけられるかもしれない」
「よし、私は逃げるものを探そう、お前は火の近くを見てくれ」
「わかった・・・じゃそういうことなんで・・・パスカル、よろしく」
ザ・ヒーローがGUMPを通じてパスカルに指示を出す。
とたんに火がついた衣類は大きな炎を上げて燃え始める。
「パスカル、いいよ、戻ってくれ」
パスカルがGUMPに戻る。
「さーて・・・鬼が出るか蛇がでるか・・・」
「鬼や蛇で済めばいいがな」
二人は双眼鏡を覗きあたりを見回し始めた。


炎。
燃え盛る。
炎。
全てを焼き尽くす。
炎。
私もあの中に入れば楽になれるだろうか?
ふらふらとした足取りで彼女はその場所にやってきた。
突如遠くに現れた光。
それに暖かい何かを感じて近づいた。
見つけた先にあった炎。
その中に彼女は暖かさを感じた。


「おっ・・・誰か来た、けど違うな・・・女性であるみたいだが・・・ははずれだ」
炎の周辺を見ていたヒーローが口を開いた。
「炎のそばに来たということはやる気になっている可能性がある・・・レンズを光らせないようにしておけ」
伽耶がヒーローに忠告を出した。
「・・・でも何か変だ・・・あんな道の真ん中をふらふら歩いてくるなんて・・・建物の中から狙撃されたら終わりだぞ」
「なに?」
ヒーローの言葉に伽耶は思わず炎の周りにレンズを向ける。
その時。
目が合った。
伽耶と女性の間は距離にして数百メートル以上。
ましてや伽耶は双眼鏡を使い覗いているにもかかわらずだ。
「しまった・・・ここにいるのがばれたぞ」
「え?」
「目が合った」
「そんな馬鹿な・・・!?」
ヒーローが再び彼女を見たとき。
彼女は走り出していた。
ヒーローと伽耶の潜伏する建物へ。
「こちらへ向かってくる!?」
「やはりばれていたか・・・しかしなんて速さだ!?」
女性の足はとんでもない速さだった。
明らかに人間の速さではない。
「どうするヒーロー!?逃げるか?」
「・・・いや、外へ出るには出口はひとつしかない!今出ても鉢合わせして追いかけられる、隠れて隙を見てから飛び出すぞ!」


頭の中に響き渡る声。
殺せ。
殺せ殺せ殺せ殺せ。
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ殺せ
ああ!
頭が割れるようにいたい。
殺意で心があふれそうだ。
どうすればとまる?
殺せ。
そうだ・・・殺すんだ。
殺せ。
あの二人を。
殺せ。
殺せば収まる。
殺せ。
やっと見つけた獲物だ。
殺せ。
殺してやる。
殺せ。
殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。
殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。
殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。
殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。


                 「ぶっ殺してやる!!」


「うふふふふ・・・・分かるのよぉ・・・・」
ドゴッと音を立てて扉が落ちた。
「彼女」が扉を蹴破ったのだ。
今度はカツーンカツーンを音を立てて中に入り、迷うことなく階段を目指す。
足音は絶やさない。
まるで2階にいるヒーローと伽耶に恐怖を与えるように。
「彼女」は自分のいる位置を示す。
2階には部屋が三つあった。
「うふふふふっ・・・隠れちゃって・・・かわいい子・・・でもね」
「彼女」は迷うことなく2番目の扉を開いた。
「アタシには丸見えなのよ」
扉を開け「彼女」は手に持ったマシンガンのトリガーを引いた。
天井に向けて。
炸裂する火薬の音と銃弾がはじける音。
銃弾を食らった安普請の天井はみしみしと音がして落ちる。
「うわぁ!?」
ヒーローと伽耶が落ちてきた。
彼らは屋根裏に潜伏していた。
「ふふふふ・・・見ぃつけた」
「彼女」はにやりと笑った。
「・・・あらー見つかっちゃった・・・」
「・・・ばかな!いくらなんでも早すぎる!」
余りに早い発見に彼らはうろたえた。
「早速だけど・・・ばいばい」
「彼女」はヒーロー達に銃口を向け引き金を引く。
直前。
「パスカル!」
「グォォォォォォオオオオオオオ!!」
ヒーローの呼び声と共に天井からパスカルが咆哮を上げ「彼女」に飛び掛る。
「きゃあ!?」
パスカルの下敷きになる「彼女」
「クラエ!」
即座にパスカルは攻撃態勢に入る。
「うふふ、かわいいお犬さん・・・いたずらはダメよ・・・ふんっ!」
「彼女」が声を上げ腕を振る。
「ヌゥ!?」
パスカルの爪が届く前に「彼女」は自分の倍以上はあろうかという魔獣を突き飛ばした。
パスカルは壁を砕き隣の部屋まで吹き飛ばされる。
「!?パスカル!!!」
予想外の自体。
目の前にいる「彼女」の腕力はパスカル以上。
ありえない。
「くっ!逃げるぞ!」
伽耶の声と共にヒーローと伽耶はあらかじめ破っておいた窓から飛び出した。
二人は2階から落下する。
「RETURN!・・・でもってSUMMON!パスカル!」
ザ・ヒーローの操作により吹き飛ばされたパスカルは一瞬にしてコンピュータに戻り再び召喚。
二人の落下地点に現れる。
そのまま二人はパスカルの上にまたがった。
「逃げるぞ!」
二人を乗せたパスカルは全速力で走り出した。
「・・・あらぁ?逃げちゃった・・・逃げちゃった子は・・・追わなきゃねぇ・・・」
「彼女」はヒーロー達と同じように窓から飛び降りる。
着地と同時にまったく衝撃を受けていないかのように走り始めた。
「うふふふふ・・・どこに隠れてたって分かるんだから・・・逃がさないわよぉ・・・」


明け方の夢崎区を二人を乗せたパスカルが失踪する。
「伽耶、追ってきてるか?」
「ああ・・・とんでもない速度だ・・・二人乗せてるとはいえ魔獣についてくるなんて!」
魔獣の速度は人間の比ではない、通常の獣でもそうだが魔獣ならばなおさらだ。
「どう思う、ヒーロー・・・あいつは異常すぎる」
「ああ・・・パスカルを吹き飛ばした腕力もそうだが・・・」
「私達の隠れ場所を一瞬で見つけたことだ、蹴破った音の時間から考えて一直線、脇見なしでこっちに来た事になる」
「腕力ニ関シテナラ・・・検討ガツイテイル」
走りながらパスカルが口を開いた。
「本当か?パスカル」
「アア・・・先ホド触レタ時解ッタ・・・アイツハモウ・・・死ンデイル・・・」
「なんだと?」
「・・・そうか、ネクロマか!」
ザ・ヒーローは声を上げた。
「・・・ソウダ、デナケレバ・・・アンナ女ガ俺ヲ突キ飛トバス等デキマイ」
「死人をゾンビとして操る術・・・ネクロマ・・・スデ死んでいるが故二度と死なず、生前以上の力が出せる」
「・・・力の理由は解った・・・では位置探査はどうだ?」
「・・・それは簡単だ、彼女は僕達には反応できたがパスカルには反応できなかった、恐らく呪いの刻印を探知しているんだろう」
「成るほど・・・だが・・・死なない!隠れることもできない!おまけに武器はマシンガン!どうするんだ、ヒーロー」
「やれやれ・・・あの炎・・・とんでもないものを読んじゃったなぁ」
ザ・ヒーローたちはまだ名簿との照合をしていないので知る由も無いが、二人を追う彼女。
名をヒロコと言った・・・。


【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:正常
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み)
道具:マグネタイト8800(諸々の使用により減少) 舞耶のノートパソコン 予備バッテリー×3
仲魔:魔獣ケルベロスを始め7匹(ピクシー・ケルベロスを召喚中)
現在地:夢崎区をケルベロスに乗り逃走中
行動方針:天野舞耶を見つける 伽耶の術を利用し脱出 現状の打破

【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:四十代目葛葉ライドウの人格 わずかに疲労
武器:スタンガン 包丁 鉄パイプ 手製の簡易封魔用管(但しまともに封魔するのは不可能、量産も無理)
道具:マグネタイト5000
仲魔:霊鳥ホウオウ(ザ・ヒーローの使役していたものを封魔、自身の使役とする)
現在地:同上
行動方針:天野舞耶を見つける ザ・ヒーローと共に脱出し、センターの支配する未来を変える 現状の打破

【ヒロコ(真・女神転生U)】
状態:死亡 何者かにかけられたネクロマによりゾンビ状態となる ゾンビ状態により肉体強化 2度と死亡することはない
武器:マシンガン
道具:呪いの刻印探知機
仲魔:無し
現在地:夢崎区にてザ・ヒーロー、大道寺伽耶 両名を追跡中
行動方針:頭に響く殺せと言う命令に従い皆殺し

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