女神転生バトルロワイヤルまとめ
第43話 瞬間 連携 逃走

「彼女は・・・」
ザ・ヒーローは全力で頭を働かせていた。
昨日から数えると何度目であろうか?
「炎の位置に来てからこちらを発見した・・・つまりレーダーの射程距離は炎から僕たちまでの距離ぐらいと言うことだ・・・だから・・・」
うまく頭が回らない、そういえばわずか数分の仮眠だけでここまで動いているのだ。
眠気は・・・ない、またそんなことを言うっている状況でもない
「・・・大雑把に見て半径1kmと言うところか」
伽耶がヒーローに補足する。
「パスカルと同等の速さを持つ彼女・・・1Km以上引き離すことなんてできるのか?」
ヒーローのその言葉に伽耶は後ろを振り返った。
追ってきている。
速度が落ちているようには見えない。
「できるできない以前に・・・やらなくてはならないのだろう」
そういうと伽耶はスカートのポケットから管を取り出す。
手に霊力を集中させ管の内部のマグネタイトの循環を促す。
伽屋の親指が管のふたを弾き飛ばした。
「出ろ!ホウオウ!」
伽耶が管を振ると巨大な鳥ホウオウがあらわれる。
「危ナソウダナ、伽耶・・・」
「追って来てる奴がいるだろう、これから足止めにいく・・・私をつかんでできるだけ高く飛べ」
「伽耶!?」
伽屋の意外な発言にヒーローは声を上げた。
「ヒーロー、私はもうお前に守られていたか弱い大道寺伽耶ではないんだぞ?・・・多少のことは何とかして見せるさ」
「伽耶・・・」
「頼むぞ、ホウオウ」
「・・・ワカッタ」
ホウオウは伽耶の肩をつかむと空高く飛び上がる。
別々に逃げよう、と言うわけではない。
直接聞いた訳ではないがなんとなくヒーローには解っていた。
悪魔との交渉を生業の一つとしてきたためだろうか?
まだ会って一日もたたぬ間柄ではあるがヒーローには伽耶・・・いや、四十代目葛葉ライドウの行動がなんとなくわかるようになっていた。


「ふぅ・・・」
ヒーローはひとつため息をついた。
「回らない頭でうだうだ考えてもしょうがないか」
そういいながらヒーローはGUMPを展開する。
「このまま逃げたところでMAG切れでジリ貧・・・だったら」
<地霊召喚・・・ノッカー・・・GO!>
<地霊召喚・・・コボルト・・・GO!>
「ノッカー、コボルト・・・タルカジャ、スクカジャ、ラクカジャを限界まで頼む・・・」
ヒーローの指示を受けると仲魔たちはいっせいに魔法を唱え始めた。
しばらくすると全ての重ねがけが完了する。
仲魔たちをGUMPに戻す
「さて・・・準備は万端・・・真っ向勝負と行きますか」
ザ・ヒーローがつぶやくとパスカルは徐々に速度を落とし始める。

「あらぁ?・・・二手に分かれて逃げるつもりかと思ってたのに・・・はずれちゃったわね」
遠くで彼ののったケルベロスがとまったのが見える。
「もうちょっと追いかけっこしたかった気もするけど・・・いいわ」
ヒロコの速度が一段階上がる。
「死にたくなったのね・・・殺してあげるわよぉ」


彼女はどう出るだろうか?
あの話し方は殺すことを楽しんでる感じだ。
いきなりマシンガンを乱射して来はすまい・・・。
普段の自分では絶対にすることの無いような希望的観測に少しだけ笑いが漏れた。
ザ・ヒーローには攻め手が無かった。
直接攻撃としてまともに使えるのはパスカルだけ。
そのパスカルは自分の足となり走っている。
飛び道具を持たないヒーローは逃げながら攻撃することはできない。
位置を探知する相手に隠れることは無意味、むしろ動きを鈍くする行為。
となれば真っ向勝負しかない。
彼女は僕の目の前で止まり嫌味のひとつも言ってから攻撃を仕掛けてくる。
その隙を狙う。
彼女が来る。
スピードはまだ落ちない。
それどころか速くなっているようにも見える。
どんどん速く・・・?
「!?しまっ」
ヒーローが言い終わる前に彼女がヒーローの横を通過する。
とっさに十字に組んだ腕の中心に鋭い一撃が入った。
ヒーローは自分の体が浮くのを感じた。


「あらぁ〜・・・どうしたの?転がっちゃって」
ヒロコはまったくスピードを緩めることなくすれ違いざまにヒーローに拳を叩き込んだ。
スピードと腕力の相乗効果。
吹っ飛ばされたヒーローは腕が痺れるのを感じだ。
「ラクカジャを限界までかけて・・・十字受けして・・・これかよ・・・」
ヒーローはゆっくり立ちあがった。
「連れの女の子はどうしたの?あのワンちゃんは?」
立ち上がったヒーローにヒロコは尋ねた。
「へへ・・・ちょっと二人きりになりたくてね・・・」
ヒーローの思惑はある程度当たっていた。
すれ違いざまに吹き飛ばされたのは誤算だったが予想通りマシンガンはヒロコの腰のホルスターに入ったままだ。
彼女は自らの手で血に触りたいのだ。
ゾンビ故の生への渇望。
それがヒロコをそうさせた。
「まぁうれしぃ・・・じゃあアタシと遊んでくれるのね?」
「・・・たっぷりちゃんばらしてやる・・・よっ!」
ヒーローは鉄パイプを振りかざしヒロコに攻撃を加える。
「あら、面白い遊び」
ヒロコはその一撃を難なく避けるとお返しと言わんばかりに拳を繰り出す。
「くぅ!?」
とんでもない速さの拳。
スクカジャが限界までかかった体で辛うじて避ける。
即座に体を反転させ鉄パイプを振る。
わき腹に一撃。今度は手ごたえはあった。
「・・・効かないわね・・・ふんっ!」
わき腹の鉄パイプを意に介した様子も無くヒロコはパスカルさえ吹き飛ばした一撃を繰り出す。
狙いは顎。
いくらラクカジャがかかっているとは言えあたったら只ではすまない。
避けられない・・・。
瞬時にそう判断したヒーローは即座に鉄パイプを引き戻し拳と顎との間に構える。
一瞬速く到達した鉄パイプに鈍い音がした。
アッパー気味に繰り出された拳は鉄パイプを歪め、再びヒーローを吹き飛ばすには十分な力がこもっていた。
「ぐぅう!?」
ちょうどその方向にあった店のショーウィンドウを破り店内までヒーローは弾き飛ばされる。
突き破ったガラス片が肌にかすり血が流れる。
「グオオオオオ!」
「!?」
ヒーローが店内の闇に消えた瞬間即座にパスカルがあらわれヒロコに襲い掛かる。
ヒーローが吹き飛ばされながらGUMPを操作したのだ。爪による一撃が繰り出される。
「くぅ!?」
ヒロコはこれを辛うじてかわす。
しかし。
パスカルの巨体、その死角から突然ヒーローが現れた。
「!?」
吹き飛ばされながらの召喚、現れたパスカルの尻尾をつかみ体に張り付く。
幼いころから一緒にいたヒーローとパスカルだからこそできたコンビネーションだった。
「うりゃぁ!」
いくら死角からの奇襲とは言え先ほどの小競り合いで鉄パイプで殴った程度ではダメージが無いのはわかっている。
狙うのは膝ーーーその裏側。
いわゆる子供のいたずら、ヒザカックンと同じ要領で鉄パイプをぶつける。
「きゃあ!?」
当然バランスを崩しヒロコは仰向けに倒れていく。
ヒロコの視界に空が映った。
その中におかしなものがひとつ。人が落下してくる。
鉄パイプを構えたセーラー服の少女、大道寺伽耶。
「はぁああああああ!」
修羅虎突き。
葛葉流剣術の中でも最高の威力を持つその技が上空からの落下スピードを携えて。
ヒロコに直撃する。


グチャと肉の突き抜ける音がした。
鉄パイプはヒロコの体を貫通していた。
「はっ!」
伽耶は鉄パイプを即座に抜いた。
すでに死んでいたとはいえ体に残る血がヒロコからどくどくとあふれ出る。
「あ・・・ああ・・・あ・・・・・・血、血、血ィ・・・・」
血、欲していたはずのそれも自らの体から出ると成ると違う。
ヒロコはわずかにうろたえた。
「グオオオオオオオ!」
隙のできたヒロコに追い討ちをかけるべくパスカルがヒロコに体当たりをする。
「あああ!?」
次はヒロコが吹き飛ばされる番だった。
先ほどのヒーローのように反対側の店のショーウィンドウを突き破り店の中へ飛んでいく。
「やったか!?」
確かな手ごたえを感じた伽耶が叫んだ。
「だめだ!ネクロマがかかっている奴はあんな程度すぐに回復してくるぞ!この隙に・・・逃げる!半径1Km以上な!」
「くっ・・・」
ヒーロー達は再びパスカルにまたがり走り出した。
彼女と直接やりあった時間はほんの数分間。
しかし体感時間はそれを軽く上回る。
蓄積されるプレッシャー。
次は逃げ切れるだろうか?
あるいは逃げ切れるかもしれない、彼女の近くに彼ら以外の獲物がいれば・・・あるいは。



【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:体中に切り傷 打撃によるダメージ 疲労
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み)
道具:マグネタイト8000(諸々の使用により減少) 舞耶のノートパソコン 予備バッテリー×3
仲魔:魔獣ケルベロスを始め7匹(ピクシー・ケルベロスを召喚中)
現在地:夢崎区をケルベロスに乗り逃走中
行動方針:天野舞耶を見つける 伽耶の術を利用し脱出 ヒロコから半径1Km以上はなれる

【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:四十代目葛葉ライドウの人格 疲労
武器:スタンガン 包丁 鉄パイプ 手製の簡易封魔用管(但しまともに封魔するのは不可能、量産も無理)
道具:マグネタイト4500(諸々の使用により減少)
仲魔:霊鳥ホウオウ(ザ・ヒーローの使役していたものを封魔、自身の使役とする)
現在地:同上
行動方針:天野舞耶を見つける ザ・ヒーローと共に脱出し、センターの支配する未来を変える 
     ヒロコから半径1Km以上はなれる

【ヒロコ(真・女神転生U)】
状態:死亡 ネクロマによりゾンビ状態(肉体強化、2度と死なない)
   大道寺伽耶の一撃により胸に穴が開いているが活動に支障は0 
   血も体に残っていた分がなくなれば止まる 僅かに混乱
武器:マシンガン
道具:呪いの刻印探知機
仲魔:無し
現在地:夢崎区店舗内に突き飛ばされる
行動方針:頭に響く殺せと言う命令に従い皆殺し

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