女神転生バトルロワイヤルまとめ
第53話 脱出への旅立ち

「明光鎧ね……なかなかにいいじゃないか」
「これでいいんだろ?ほら、というわけでさよなら〜……」
もう何度防空壕で繰り返された光景だろうか?数えるのも馬鹿らしい。何しろ、始まりから結末まで、
全て同じなのだから。
去ろうとしていた悪魔の肩を掴む。
「な……なんだよ、これでさよならじゃないのかよ!?」
「ああ、さよならだ」
メリケンサックをはめた腕が悪魔の顎を捉える。強烈な一撃を受け、倒れる悪魔。
体が倒れる音に続いて、何か落ちた音が聞こえる。首だ。彼の一撃を受け、胴体からどうやら泣き別れに
なったようだ。
もう、説明する必要もないだろう。神代浩次である。

「スターグローブ、レザーブーツ、明光鎧にナイフが2本、メリケンサックに夢想正宗。う〜ん完璧」
自分が集めたものを見て鷹揚に頷く。
「消耗品も集まったし、MAGもGOOD。後は悪魔だな」
COMPの画面を開く。ノッカー、コボルト、ニギミタマと三体の悪魔が写っていたが……
「弱いなぁ……ノッカーとかコボルトはカジャ要員としても……前衛は俺として、魔法が使える悪魔が欲しいねぇ」
かといって強力な魔法攻撃の使える悪魔を作るには、この周囲程度の悪魔では、どれだけ集める必要があるか……
それを考えるとため息が出る。
「精霊は作りやすいんだし、ひたすらランクアップか?いや、それは上げてもイマイチだったときが困るし」
ランクアップさせまくった挙句、物理攻撃一辺倒でしたとか、回復魔法しか持ってませんとか、すいません、
お役に立てるような悪魔じゃございませんとかは避けたい。
ダラダラと歩きながら思案を練る。何かうまい方法はないものか?
正直、もうカジャかけまくった俺一人でもいけるんじゃないかとか思わないでもないが、こちらの予想の遥か
斜め上の実力者がいたときが困るし、悪魔使いが混じってて大量の悪魔を向かわされては少々きつい。
2,3体なら悪魔をすり抜けて召喚者を殺る自信はあるが。
「そろそろ放送か……じゃ、一旦上に戻るかな」
そろそろ放送だ。いったい何人が死んだのか?また、誰が死んだのかチェックする必要がある。
暗い闇の底から抜け出て、光差す地表に帰る。ずっと暗いところにいたせいか、僅かな夜明けの光はとても
眩しく見えた。
ちょうど鳴り響く放送。死者を告げる呪いの声が彼に喜びをもたらす。
「11人か……まぁ、悪くないペースだな」
チェックを終えた彼は、少しそのまま静かに外を見ていた。

「朝日なんて……いや、太陽なんて久しぶりだな」
この何ヶ月も、ひたすら魔界で生き残るための殺し合いの毎日。太陽も希望と死んだ世界でクラスメートの
なれ果てを殺し、スーパーロボットになっていく教師と命を削りあい、リングを手に入れるために他人を見捨
て、ひたすら悪魔をすり減らし、時には死んでも立ち上がる日々。
学校の窓から上っていく太陽を見ることなど想像もしなかった。
すこし、自分は帰ってきたのではないだろうか、という幻像を覚える。暖かく、友達と笑いあったころに。
「いや、そんなわけないか」
ここは殺し合いの世界なのだ。そんな暖かさなどあるわけがない。それに、今まで自分がやってきたことを
考えてみろ。誰がどの面下げてあの頃に戻れるというんだ?もう、殺すことに抵抗もない。目的のためなら
何だって捨てる。なんだって使う。そんな俺が、戻れる?馬鹿馬鹿しい。今殺し合いに乗る気でいるのも、
正しく言うなら戻るためではない。死にたくないからだ。
ふと上を見上げる。もちろんそこにいるのは自分のガーディアン、ラハブ。「混沌」を意味する怪物で、神が天
地の創造を行う前からすでに存在していたという。
もう、何体目か数えるのも面倒なほどに味わった死の苦しみと、新たな力の覚醒。死ねば死ぬほど彼は強
くなっていった。強大なロボットと互角に戦えるほどに。
これから、どうするか?まだ狩るか?それとも外に出て情報収集と他の狩場に移るか?
それを考えているとき……
「え?」
気付いた。チェックのついででパラパラと名簿をめくって、ユミという名前に横線を入れたとき。
その上の2人の名前に。
「赤根沢玲子、狭間偉出夫……ク……ハハハ……ハハハハハハ!!」
気がつけば彼は笑っていた。心から、暗い笑いを高らかに。
ハザマがいる。あの、俺たちを魔界に引き込んだいけ好かない野朗がここにいる。
レイコがいる。ハザマに対しての最終兵器が。
落ち着け、状況を整理しろ、考えるんだ。ハザマは既に俺とレイコに2度破れている。1度目は現実で、2度
目は精神世界で。そしてレイコは奴の精神世界に残った。ここまでは事実だ。
そしてここからは可能性のはなしだ。ハザマは学校を魔界に堕とす力を持っている。堕とす力、つまりは異
界と現実をつなげる力。奴を使えば、ここから抜け出ることができ、ハザマと同じようにこのクソッタレたゲ−
ムの主催者をシバくことができるかもしれない。
力量の問題は解決済みだ。あいつがver自由の女神像になろうが負けることはないだろう。2度の経験が物
語っている。が、あの根暗が素直に俺の言うことを聞くとは思えない。ここでレイコの出番だ。さしものあいつ
も自分のために残ってくれた妹の言葉を完全に無視はできまい。あのときの精神状況を返りみれば間違い
ない。

つまりは……
『レイコを回収してハザマを利用する』
完璧だ。完璧すぎるプラン。これならあの主催者をぶっ飛ばすことができる。
もし、それが駄目なら全員デストローイしてやるだけだ。
「さぁ、そうと決まれば善は急げだ。あのレイコやハザマが早々簡単に殺されるとは思えないが……念には
念を、ってね」
レイコなしでハザマと会ったら撤退。
レイコがいれば回収。
そのあとハザマを説得。
それ以外の参加者と出会ったら、プラン2(全員デストローイ)のため殺す。
「さぁ、狩りの時間だ……!」
軽やかに窓から飛び出した。



【神代浩次(真・女神転生if、主人公)】
状態:実に健康
武器:夢想正宗 アサセミナイフ×2
防具:スターグローブ(電撃吸収) レザーブーツ  明光鎧(電撃弱点、衝撃吸収)
道具:メリケンサック型COMP 魔石4つ 傷薬2つ ディスポイズン2つ 閃光の石版 MAG1716
仲間:ニギミタマ  ノッカー コボルト
現在地:春日山高校
行動方針:レイコの回収、ハザマの探索、デストロイ

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