女神転生バトルロワイアルまとめ
第90話 復活

此処は一体どこだろうか?
眼前に広がるは全てを飲み込む無
一筋の明かりも無い闇。
聴覚が、嗅覚が、視覚が、触覚が、
五感の全てが何も感じ取ることが出来ずにいた。
空を飛んでいる気さえした。
ああ此処は一体どこであろうか?黄泉の国か?地獄か?あるいは天国か?

「そうか、私は死んだのか…。」
自分でも驚くほどすんなりと、其れを受け入れることが出来た。

段々と意識がはっきりとしていくにつれ、(死んでいるはずなのに意識とはおかしな話だが)
記憶の深層の淵から「死ぬ」までの事が落葉が降り注ぐように呼び起こされてきた。
あの「ゲーム」に呼ばれてから、この地に堕ちるまで。全てが鮮明に思い起こされた。
だがもうそんな事はどうでもいいのだ。
萬に一つ。いや、億に一つの不運とはいえ、この狭間偉出夫が、この魔神皇が不覚を取り、死を迎え入れたのだ。

しかし地獄か、天国か、其れは知らぬが、誠あの世というもはしみったれたものだな。
罰か、あるいは幸福か、そんなものは何一つ無い。あるのはただただ無ひとつ。無が在るとは矛盾しているようだが、ただそれだけだ。

自分の体勢すら分からないでいたが、何か窮屈な気がしたので軽く伸びをしてみた。その時だ。

「ぬっ…」
思わず声が漏れた。痛んだのだ。右の手首が、今確かに痛みを感じ取ったのだ。
条件反射的に抑えてみれば、なるほど血が出ている。生きている!自分は!

目が慣れてきたというのもあるが、今の痛みのおかげでハザマは完全に覚醒した
手首を傷つけたのに、今まで感じたことが無い程すがすがしい気分で起きあがった。

此処は天国で無ければ地獄でもない。スマル市とかいったか。そこのどこかだ。
木々が生い茂っている。そうだ。忌々しいが、山の斜面にたたき落とされたのだ。
そして辺りを見回していたハザマは愕然とした。一寸先には闇…ではないが、断崖の下には鮮やかなブルーのキャンパスに白い雲が浮かんでいる。
目の前に「空」がある。
原理は判らぬが、町ごと切り取って浮かべたような、そんな感じだ。
「住民はいないから好きに暴れてくれてかまわない。」確かではないが、主催者がそのようなことを言っていた事を思い出した。
このゲームとやらの為にわざわざこんな大それた事をしたのか?
まあ、そんな事はどうでもいいのだ。勝って、生きて帰るのはこの魔神皇ただ一人だ。

それとどうやら今手首を切った木の枝、それが伸びている木がクッションになってくれたらしい。
危うく、(奇妙だが)空に落ちるところを救ってくれた上、そして何より生きていることをしらしめたこの木。

いわば命の恩人だが、手首の傷を見ると無性に腹が立った。
惨めにもこの底に蹴落とされ、また、あの二人組。一人は確かライドウといったか。落下する際に確かに聞いた。もう一人の名は判らぬがまあいい。
あのような不徳の輩によりもたらされたやもしれぬ死を、いとも容易く受け入れていた自分を想うと、一層腹立たしく思えた。

軽く「恩人」の木に手を翳すと、その根から枝の梢まで塵にしてやった。

「おのれ…この恥辱…。必ずや晴らさせてもらうぞ!
 四肢をズタズタに引き裂き、五臓六腑を引きずり出し、奈落の底に叩き落としてくれよう!」

純白の学生服に付いた泥やらなにやらを軽く払い、声高らかに一人宣言すると、狭間偉出夫は歩きだした。



<時刻:午後1時>
【狭間偉出夫(真・女神転生if...)】
状態 手首の切り傷と、落下の際打撲等を負ったがいずれも軽傷。精神的にはすこぶる快調
武器 落下の際ザックごと失ったが、彼は何も必要無いと思っている。
道具 同上。
現在地 蝸牛山
行動方針 葛葉ライドウ、鳴海昌平 両名への復讐 皆殺し

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