女神転生バトルロワイアルまとめ
第104話 「待つ者」「探す者」

「うっ・・・」
達哉がうめき声を一つ上げた。
今まで閉じていた達哉の目がゆっくりと開く。
「・・・お目覚めかな?」
途端、声をかけられた。
「!?」
すぐに構えようとするも体が動かない。
どうやら椅子にくくりつけられているようだ。
「おっと、悪いけど縛らせてもらったよ」
達哉の前ではヒーローがGUMPをこちらに向けていた。
「そんなロープは君ならアギでも使えば簡単に切れるだろうけどね、切ろうとしたら・・・バンッだよ?」
口調こそ冗談っぽいがヒーローの目は本気だ。
「それは銃・・・じゃないな」
達哉は決して動じず、ボソッとしゃべった。
達哉は以前たまきがソレと似たものを持っていたのを見たことがある。
するとあれから出るのは弾丸じゃなく・・・。
「お、見たことあるのかな?確かにこれは銃じゃないけど・・・弾よりもっと怖いものが出るかもよ?」
ヒーローはシレっとした様子だ。
達哉は確信した。
やはりあれは以前見たものと同じ。
あれから出るのは悪魔だと。
自分が反抗すれば悪魔を撃ち込まれるのだ。
「・・・俺をどうするつもりだ?」
自分の絶対的不利を理解しながらも達哉の口調に動じた様子は無い。
「とりあえず尋問かな?」
「答えないのならバンッ!こちらが嘘を言ったと思ったらまたバンッ!僕の気に入らない答えでもやっぱりバンッ!・・・OK?」
「待遇は最悪レベルだけどさ、一回襲い掛かってきてるんだ、スグに殺されないだけマシとでも思ってよ」
「・・・わかった」
軽い調子でしゃべるヒーローに達哉はボソッと一言だけ返事を返した。


「交渉」が始まった。


「質問その1・・・君は優勝狙いかい?」
「・・・いや、俺は優勝で脱出するつもりは無い」
事実だ、これは問題ない。
「・・・質問その2、君は誰も殺さないつもり?」
「NO・・・だ、必要なら殺す・・・すでに一人殺した」
達哉にとって不利になる質問だ。嘘をついてもよかった・・・しかし見透かされる気がした。
「ふーん・・・その3、このゲームから脱出したいかい?」
「・・・ああ」
「アテは?」
「無い」
「そりゃ残念・・・その4、ゲーム開始前から知ってる人はいる?いるなら何人?」
「いる、9人だ・・・最初の放送で5人死んでる・・・」
「・・・残り4人の名前、言える?」
「・・・・・・南条圭、桐嶋英理子、周防克哉・・・それに・・・天野舞耶」
「天野舞耶?彼女の関係者か」
ヒーローは自分が捜していた人物の名前が出たことに少し驚いた。
「舞耶姉を知ってるのか!?」
いままで落ち着いた口調だった達哉だがヒーローの言葉に声を荒げる。
「質問その5・・・」
そんな達哉の様子に何かを察したようにヒーローは質問を続ける。
「答えろ!舞耶姉は!」
「質問その5!・・・お前は誰かを・・・優勝させるつもりなのか?」
ヒーローは有無を言わせず質問を続ける。
そこに先ほどまでの冗談じみた口調は無くなっていた。
「!!」
「繰り返すぞ・・・お前は・・・そいつ以外を皆殺しにして最後に自殺することでそいつを優勝させるつもりか?」
さらに語調が強くなった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・最悪の場合、そのつもりだ」
それは今までよりも小さな声、けれどはっきりした決意をこめて・・・達哉はYESの返事をした。
「聞くまでも無いけど・・・天野舞耶だね?」
達哉の返事を聞くとヒーローの口調が戻った。
彼の頭の中で一つの結論が出たようだ。
「・・・ああ」
「天野舞耶は今・・・平坂区からこちらに向かっている」
「場所・・・わかるのか!?」
「まだ会った訳じゃないけどね、僕のところへ向かっているのは確かだ」
「この縄を解いてくれ・・・舞耶姉のところに行く」
「行ってどうする?」
「守る」
「ここにいればいずれは来るよ」
「ここに来るまでに襲われるかもしれない」
「行き違いになるかも・・・」
「それならまた探すまでだ」
「・・・解ったよ」
ヒーローはこれ以上続けても意味がないと判断し妥協した。
正直ヒーローにとって、この町の実情さえ知っていれば天野舞耶で無くともかまわないのだ。
目の前にいる周防達哉もまたこの町の出身者のようだし情報を聞くには十分なはずだ。
しかし、今までの会話から考えて舞耶を無視するなど達哉が出来るはずもないことはわかっていた。

「天野舞耶は現在彼女を含めて三人と、僕の仲魔のピクシーで行動している」
「ピクシー?」
「ああ、僕が彼女を探すために出した奴だ、彼女の現状もピクシーからの報告で知っているだけで実際に会ったわけじゃない」
既にヒーローはGUMPを達哉に向けるのを止めている。
「君が天野舞耶を見つけたらここに連れてきて欲しい、頭数は多いほうがいい」
「・・・脱出のアテがあるのか?」
「2割ってところだね、今のところは」
「解った、無いよりマシだ」
「ピクシーに上空から君を探させよう、多分見つけるのは向こうが先になる」
「助かる・・・それより一刻も早く動きたい、ロープを解いてくれ」
「・・・解いてる最中にアギダインを撃ち込まれちゃたまらないからね、僕は上の階に行くから行った後に適当にアギかなんかで抜けてよ」
そういうとヒーローは立ち上がり階段に通じる扉に向かう。
「それじゃ頑張ってね、期待してるよ」
言うが速いかヒーローは扉から出て行った。


「・・・・・・」
一人残された達哉、文句の一つも言いたかったがそんな暇が無いのも事実だった。
「ペルソナ」
達哉がつぶやくと彼の半身たるアポロが現れロープを焼ききった。
「荷物は・・・あるな」
達哉は部屋の片隅に置かれた自分の荷物を担ぐ。
「舞耶姉・・・今行く」
守るべきもの場所はわかった。
彼にもう迷いは無い。
太陽の半身は朝日を背に走り出した。







「よかったのか?奴を行かせて」
上のフロアで周囲を警戒していた伽耶が尋ねた。
「僕らが説得するより天野舞耶に任せたほうがよさそうだからね、彼の場合…うまくすれば僕らの火力不足が一気に解消できるかも」
「お前がそれでいいならいいんだが…ところでなんだ?その虫みたいなのは」
「彼の支給品みたいだけどね、情報料ってことで」
「役に立つのか?」
「さぁ・・・」
「気持ち悪いな・・・お前が持っておけよ」



【時間:】
【ザ・ヒーロー(真・女神転生)】
状態:体中に切り傷 打撃によるダメージ 疲労(ガリバーマジックの効果によりほぼ回復)
武器:鉄パイプ、ガンタイプコンピュータ(百太郎 ガリバーマジック コペルニクスインストール済み) 虫のようなもの
道具:マグネタイト8000 舞耶のノートパソコン 予備バッテリー×3 双眼鏡
仲魔:魔獣ケルベロスを始め7匹(ピクシーを召喚中)
現在地:青葉区オフィス街にて双眼鏡で監視しつつ休憩中
行動方針:天野舞耶達がここを訪れるのを待つ 伽耶の術を利用し脱出 体力の回復  

【大道寺伽耶(葛葉ライドウ対超力兵団)】
状態:四十代目葛葉ライドウの人格 
疲労 首に爪跡があるが、大したダメージではない
武器:スタンガン 包丁 手製の簡易封魔用管(但しまともに封魔するのは不可能、量産も無理)
道具:マグネタイト4500 双眼鏡 イン・ラケチ
仲魔:霊鳥ホウオウ
現在地:同上
行動方針:天野舞耶がここを訪れるのを待つ ザ・ヒーローと共に脱出し、センターの支配する未来を変える 体力の回復

【周防達哉(ペルソナ2罪)】
状態:脇腹負傷(出血は無し)
武器:なし
道具:チューインソウル 宝玉
ペルソナ:アポロ
現在地:青葉区オフィス街から平坂区の方角へ
行動方針:舞耶を守る 主催者を倒し脱出する 最悪の場合舞耶を優勝者にする

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