蟲毒
甕に様々な毒蟲をいれ殺し合わせる。
最後の一匹になったものは蟲毒となり様々な呪いを行う呪法。
青葉区 スマルテレビ屋上。
ここで行われている行為は正にそれ。
四方数十メートル程度の「甕」で行われている悪魔同士の殺し合い。
人の頭では想像できようはずも無い光景がそこにはあった
何の変哲も無い右ストレート。
だがそれは悪魔の急所を的確に抉りぬく。
人修羅
人であり悪魔。
ほんの数時間前までは十分に人としての心を残していた彼。
彼は今自らの仲魔と殺しあっている。
頼り、頼られたはずの仲魔と完全なる自分の意思で殺しあう。
手に残る肉の感触が。
吹き出る体液の温かさが。
そして何より消えていく命の感触が。
確実に人修羅の人としての部分をそぎ落としていくのが解る。
悪魔が一体・・・また一体と地に伏せ、躯となる。
そのたびに人修羅の凶暴性は増していくのだ。
そしてそれは魔仲魔もまた同じだ。
かつて主人だったものに容赦なく攻撃を加える。
放つ魔法は皮を焼き、繰り出す武器は肉を抉る。
確実に人修羅の体力をそいでいく。
確実に人修羅の「人」を消していく。
今の人修羅には「情け」や「容赦」などは存在しない。
「オオォーーーーーーーー!!」
地 母 の 晩 餐 ッ!!
咆哮、そして衝撃。
広範囲に放たれる衝撃波。
耐性の無いものは即座に塵と化す。
そして耐性のあるものは・・・。
煙の奥から現れた最後の悪魔。
その悪魔の放つ一撃は技を放った直後、無防備な人修羅の左腕を引きちぎった。
同時に腕の付け根から血が噴出する。
血が流れる。
流れ落ちる。
かつて人だったときから流れ続けていた血が。
流れ落ちる。
彼の心に最後のほんのちょっぴり染み付いた人の心を。
洗い流していく。
(ああ・・・血だけはまだ・・・赤いな・・・)
これは「人」としての人修羅の最後の思考。
「グォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」
咆哮。
あるいはソレは産声だったのかも知れない。
もうそこに
人など
いない。
(物理ハ・・・キカナイ・・・)
この考えをしたのは本能。
常に戦いを望む悪魔の本能。
その本能は目の前の悪魔を倒す最善の一手を選択する。
殺戮のための一手。
至 高 の 魔 弾ッ!!
人修羅から放たれた光線は悪魔を貫く。
そして躯がまた一つ。
屋上に悪魔の死体が12。
人修羅はゆっくりと死体に近づくと死体を持ち上げる。
彼は勝者だ。
彼は蟲毒だ。
彼がやることは・・・・・・一つ。
人修羅は死体にゆっくりと口を近づけた。
悪魔の死体を貪り食う隻腕の男。
その体からは悪魔の体液による強烈な異臭が放たれている。
今の彼に、「人」を感じられるものがいるだろうか?
いはしない。
敵だろうと。
かつての友であろうと。
人修羅自身だろうと。
【時間:午前11時】
【人修羅(主人公)(真・女神転生V-nocturne-)】
状態:左肩から下を欠損し出血中
受けたダメージと消耗により既にまともにスキルを使用することは不可能
悪魔化 殺戮衝動
体中に悪魔の体液を浴びており強烈な異臭がする
武器:素手
道具:無し(所持していたものは先の戦闘の巻き添えで塵に)
仲魔:無し
現在位置:スマルTV屋上
行動指針:本能の赴くままに殺戮
備考:悪魔との戦闘はとてつもない音が響いたため青葉区にいればまず気づくでしょう。
左腕からは血が流れていますが、悪魔である彼が出血死するかは不明です。
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