女神転生バトルロワイアルまとめ
第115話 仲間と仲間、仲間と仲間

 わずらわしい、と藤堂尚也は思った。五感に伝わり脳に認識されるすべてが、ただただわずらわしい。
  だから、走った。考えたくなかった。感じるのもいやだった。闇雲に走れば逃げ切れるのではないかと、なんの
根拠もない希望に縋って、絶望しながらただただ走った。
  この感覚は久しぶりだった。決して懐かしくはない。あの無気力で、自堕落で、目に入るすべてから逃げていた、
あのころの自分に戻ったように思える。自分は変わったのではなかったか。過去を受け入れ、信頼しあえる仲間と
めぐりあい、苦難を乗り越え成長したのではなかったか。己の仮面に問いかけるが、ヴィシュヌは黙して答えない。
冷酷なようにも、慈愛に満ちたようにも見える瞳で、尚也を見返してくるだけだ。
「…さん…藤堂さん!」
  女の悲鳴が聞こえて、尚也はふと我に帰った。気づけば、すでに周囲の景色は、先ほどまでの住宅街から一変し、
ビルの立ち並ぶオフィス街へと変わっている。
「…藤堂さん…痛いです…」
  また、女のか細い声。――マキ? いや、違う。尚也は首を振った。赤根沢レイコ。大事な――人質だ。レイコの
左の手首を、尚也は右手で握っていた。そのまま、引きずるようにして走り続けてきていたのだ。レイコは掴まれて
いない右手を尚也の右手にかぶせるようにして、もう一度「痛いです」と、今度ははっきり尚也の顔を見て言った。
「――あッ、す、すまない」
  尚也はあわてて右手を開いた。レイコの手首は痛々しい青紫色に変色している。
  最強クラスのペルソナの力を制御せずにここまで走り続けてきたのだ、と尚也はいまさらながらに気づく。か弱い
女の子の手を、万力のような力で掴んで、常人の数倍の脚力で疾走しつづけてきてしまった。急に罪悪感に襲われて
愕然とする。頭が勝手に謝罪の言葉を検索し始めたが、口は凍りついたように動かない。
「…なんで、逃げるんですか?」
  レイコが、怒りをにじませた口調で言った。反射的に出かかった謝罪の言葉を、尚也は飲み込む。レイコが怒って
いるのは、手首の痛みのような小さなことではない。それが分かった。
「…なんで、友達から逃げるんですか? なんで、仲間から逃げるんですか?」
「仲間だからだ」
  レイコの言葉を遮り、尚也は叫ぶように答えた。
「俺の決意が鈍らないためにだ。俺のわがままに巻き込まないためにだ。俺が逃げ出したくならないためにだ」
  言いながら、尚也は自分の言葉が心から離れていくのを感じた。決意など、すでに鈍っている。巻き込みたくない
のではなく、関わられて嗤われるのが恐ろしいだけだ。そして、すでに逃げ出したくてたまらなかった。
  それでも。自分を偽ってでも、進まねばならないことは、尚也にはよく分かっていた。すでに逃げ道はなかった。
自分でそれを断ってきたのだ。悔いはあるが、それも自分の選んだ道だった。
「…なんで」
  レイコがまた言った。瞳に涙をためながら、悲しそうなか細い声で。
「…なんで、自分から、逃げるんですか…?」

          *    *    *

  神代浩次は上機嫌だった。
  相変わらずひどい負傷ではあった。肩は外れっぱなしだし、ヘシ折れた奥歯が腫れはじめて顔面がひどく熱い。
が、痛いということは生きているということだ。しょぼいとはいえ一応武器はゲットしたし、何よりも自由の身だ。
  とりあえず現在、彼はシーサイドモールから東に向けて歩いているところである。アケミちゃんの持っている、
悪魔召喚プログラムは喉から手が出るほど欲しい。が、どーやら少なくともさらに2名ほど厄介な奴がドンパチ
やっていると思われるところにわざわざ首を突っ込むほど、彼は自信過剰ではないし勤勉でもなかった。
  漁夫の利、ってやつだ、と彼は思う。全員がやりあって、ほどほどに消耗した頃合を見計らって、横からすべて
掻っ攫ってやろう。それまで俺は、戦力増強といかせてもらうぜ。
  ひょい、と背丈ほどの高さのブロック塀を乗り越えて、高級そうなマンションの敷地に侵入。雨どいを掴んで
2階へ軽々昇り、窓を壊して中に入った。熟練の空き巣もマッサオの軽業である。片手一本でこれをやってのける
身体能力は、言うまでもなく"守護者"の賜物だった。
「あちゃあ、きったねえ部屋」
  遠慮会釈もなくつぶやいて、のっしのっしと部屋を物色する。こういう部屋に住んでる奴は独り暮らしの男、と
相場が決まっている。好都合、と彼は笑う。戸棚を空けると、未開封の頭痛薬。乱暴に箱を破って薬を取り出すと、
水も飲まずに直接錠剤をばりばりと噛み砕いた。さらに別の戸棚には、溜め置きのレトルト食品の山。2日ぐらい
なら十分に食いつなげるだろう。ありがたいことに、防災カバンとやらまである。中にはちょっとした救急セット、
水のボトルが1本。クローゼットを開けると、そこそこ趣味のいいスーツ。ちょうどいいや、と血に塗れた制服を
脱ぎ捨て着替えた。さらにテーブルのうえには、結構新しいノートパソコン。当然悪魔召喚プログラムは入っては
いないだろうが、あって無駄になるものでもない。さすがに銃だの剣だのなんかはないが、ゴルフクラブがあった
ので念のため1本拝借する。ザックが戦利品で快調に膨らんでいくのを見て、神代はにやりと笑った。
  隣の部屋を覗く。やはりロクなものがないが、そこそこ高級なモデルガンを見つけた。もちろん弾は出ないが、
威嚇などには使えるだろう。その近くにあった腕時計と一緒に上着の内ポケットに突っ込んだ。
  本棚を漁る。イン・ラケチとかいう趣味の悪い本を見つけたが、神代は一瞥くれると即投げ捨てた。オカルト話
なんぞに興味はない。読むまでもなく自分の体験だけで十分だった。市内地図があるかと思ったが、さすがにない。
支給品以外の地図を1枚手に入れておきたかったが、それはまあ後でコンビニで拝借すればいいだろう。
「へッ、我ながら惚れ惚れするぐらい迅速な行動だな」
  芝居がかったような動作で、腕時計を見る。およそ30分の家捜しで、見違えるほど充実した装備になった。
「…さて、そろそろアケミちゃんのお迎えに行かなくっちゃあな」
  上機嫌で窓からベランダへ。飛び降りようとしたとき…聞き覚えのある声が聞こえた。

          *    *    *

  言わなきゃいけない、と赤根沢玲子は決意していた。
  自分のために、ではない。尚也のために、というほどおこがましいことを言うつもりもない。ただ、言わなければ
ならない気がしたから、言う。我ながら訳がわからない理論だったが、レイコは気にしなかった。訳のわからなさで
言えば、魔神皇だの魔界だの、空飛ぶ街での殺し合いだの、自分の経験してきたことほとんどのほうがよっぽどだ。
「…なんで、自分から、逃げるんですか…?」
  強く言ったつもりだったが、声が震えてしまった。頬を伝う涙の感触で、自分が泣いていることに初めて気づく。
あわてて、レイコは涙を拭った。泣き落としで説得しようなどとは思っていないのに、そういう形になってしまい
そうだった。それだけはダメだ。レイコは尚也を、一時の情だけではなく、ちゃんとした理論で説得したかった。
「…自分から、逃げる?」
  尚也が鸚鵡返しに尋ねた。そんなことは思いもしなかった、という顔だ。自分が間違っていることを知っている
のに、それを認めないために過ちを繰り返してしまう。そんな存在を、レイコはひとり知っている。今の尚也は、
その人にそっくりだった。だからこそ、放っておけない。
「そうです…だってあなたは本当は気づいてる」
「…何に、だ?」
  尚也は目を伏せた。左手が耳たぶに伸び、ピアスをいじりはじめた。
「…それ、止めてください」
  レイコは手を伸ばし、尚也の左手を押さえた。
「自分を痛めつけてるみたいで…見ていて、つらいです」
「…なら、見なければいいだろうッ」
「そんな権利はあなたにはありません」
  乱暴に振り払われた腕を、また強引に掴んで止める。また振りほどこうと暴れる腕を、レイコは全力で押さえた。
レイコの"守護者"は力に優れたタイプではないため、全力勝負なら尚也に勝てるはずはない。が、その意外な力の
大きさに驚いたからか、尚也はあっさり抵抗を止めた。
「他人を拒む権利なんか、誰にもないんです」
「…口だけならなんとでも言える!」
  尚也が急にレイコの両手首を掴んだ。万力のような力に、ひっ、と思わず声が漏れる。尚也の目が強い光を放って
いる。悲しい色だ、とレイコは思った。
「今、俺がお前に襲い掛かっても、お前は俺を拒まないのか? 冗談もたいがいにしろ!」
「…拒みません」
「…何?」
「今のあなたが相手なら…拒みません。…あなたがそうしたいなら」
  睨み返すように、レイコは答えた。自棄になっているのではない。本気で、レイコはそう思っていた。絶句した
尚也の目から、光が抜け落ちていくのが分かった。
「…冗談もたいがいにしろ」
  尚也は手首を放すと、レイコに背を向けた。拒絶。背中でそれを語られたが、ここであきらめるわけにもいかない。
「藤堂さん!」
  声をかけた。その瞬間、電撃が尚也を襲った。

          *    *    *

  当たりだ、と神代浩次は思った。効果範囲が広いマハ系魔法が飛び出すうえ種類がランダムなため、なかば賭けの
つもりで使った赤巻紙だったが、どうやら運は自分に向いてきているらしい。運よくちょうどいい角度で男がレイコ
から離れてくれた。運よく追加効果のある属性魔法が飛び出てくれた。そして運よく男は感電してくれた。
「おいおい、人のオンナに勝手に手ェ出してんじゃねーよ、色男クン?」
  安心してゆっくりと物陰から出た。こうやって見下すセリフを言えるのは強者の特権だ。何度味わっても心地よい。 
「…! 神代くん!」
「そう他人行儀に呼ぶなよォレイコ。Cozyって呼んでくれって言ってるだろ?」
「…今、初めて聞きましたけど」
「ははッ、相変わらずクソマジメだなァ」
  たわいもない会話。もちろん狙ってやっていた。男を殺すつもりなら、一気に飛び出してゴルフクラブで脳天を
叩き割っている。そうする必要がないから、あえてこうして喋っているのだ。
「…で、ナニをナニするつもりだったんだ、色男? テメェただじゃ済まさねえぞ」
「待って神代くん! 藤堂さんは悪い人じゃないわ」
「あ? お前、さっきどう見てもお前をレイプしようとしてたじゃねーか」
「それは…その、とにかく違うの」
  いやはや、レイコは本当に素直でいい女だ、と神代はほくそえむ。こうまで狙ったとおりの発言をしてくれるとは。
これで、このマヌケな色男トードーくんは、神代とレイコがツーカーの間柄だということをしっかり理解してくれた
はずだろう。そうなれば、こちとら交渉の達人、舌先三寸で丸め込むぐらいは朝飯前の芸当だ。
  物陰からちょっと見ているだけで、男がレイコに対して危害を加える人間ではないことは、すぐ分かった。とする
ならば、この男を殺してレイコを強奪するよりは、レイコごと篭絡して利用しつくすほうがよっぽど賢い選択である。
神代はそこまで素早く計算し、出て行くタイミングを計って待っていた。うかつに出ても警戒されるのは目に見えて
いる。ならば、自分が信用できる味方だと、最大限に売り込むタイミングと方法を測るしかない。多少賭けの要素は
出てくるが、ダメでもともとやってみて――そしていま成功しつつある。神代は心の中でにやりと笑った。
  男が感電して動けないことをいいことに、レイコとさっさと話を進める。これこれこう、あーだこーだと、今まで
どういう冒険をしてきたかをこと細かく喋っていく。もちろん自分の悪行をぺらぺら喋るほど神代は間抜けではない。
間抜けマッチョと鎖男を殺したのは学校一の不良少年アキラだということにして、リーゼント野郎と二人まとめて
悪者コンビに仕立て上げた。漁夫の利作戦のためにも、シーサイドモールの件も一切を伏せておく。モールのお碗型
構造が幸いし、戦闘音は東側にはあまり響かなかったらしいので、知らぬ存ぜぬで押し通せるのは楽でいい。
「で、ハザマの野郎なんだが」
  神代が切り出すと、レイコの表情が動いた。今にも食って掛かってきそうな感じだ。
「おいおいあせるなよ。…俺もまだ会ってはいねえんだ。探してはいるんだがな」
「…そうですか」
  あからさまに落胆の色を浮かべる。この様子ならば、ハザマの説得にも協力してくれそうだ、と神代はまた心の
なかでほくそ笑んだ。一度はケチがついたものの、どうやら自分の運勢はまだまだ絶好調らしい。

          *    *    *

  手足こそなんとか動くようになったものの、舌も、肺も、喉も、まだ思うように動かせない。藤堂尚也の発する
声は、か細い呻き声にしかならなかった。
「いやぁ、済まねェことしたな、藤堂くん。完全に俺の勘違いだったよ、許してくれ」
  神代浩次、と名乗ったスーツの男(そもそも何でスーツなんだ? レイコの同級生なんだろ?)は、非の打ち所の
ないような見事な笑顔で言う。それが、尚也の気に障った。こういうタイプの奴にロクなやつはいない。喋っている
ことは、ウソか、事実でも都合よくツギハギされたものに違いない。レイコとは対極にいるような人物なのに、なぜ
レイコがこいつをそんなに信頼しているのか、尚也にはまったく理解できなかった。
  腕は立つ。それは間違いなかった。電撃を喰らう瞬間まで、他のことに気をとられていたとはいえ、一切の気配を
感じなかった。だがこうして面と向かい合うと圧迫されるような気分になるのだ。ペルソナの加護があるというのに、
その重圧を跳ね返しきることができない。剛柔どちらにも対応できる、優れた戦士なのだろう。もし仮に戦うとした
ならば、ほぼ五分。魔法は使えないと言っていたのと、相当の負傷をしているので、そこの差だけ自分がやや有利か。
しかし逆に言えば差はそこしかない。この男のこと、その程度なら思いもよらぬ手でひっくり返してくるに違いない。
現に今、自分はこうして手玉に取られている。さきほど本気で不意打ちをされていれば、いまごろ生きてはいない。
「…で、このあとはどういう方針で行動するつもりなんだ? ああ喋れないんだな、これで目的地を指してくれ」
  とザックから手早く地図を取り出す。この気の利かせ方も尚也には不快だった。もっともそれを言い出したところ
で、言いがかりにしかならないだろう。実際に言いがかりに近い反感なのだ。なぜこんなにもこの男に対して嫌悪が
先に立つのか、尚也自身にも不思議でしょうがなかった。
「…」
  尚也は無言でペンを取り出し、地図を裏返して「特に決めていない」と殴り書いた。アスファルトのごつごつした
路面の穴にペンが落ちて書きづらい。字が歪み紙が折れる。神代はそれを見てイヤな顔をしてつぶやく。
「おいおい俺の地図だぜ、丁寧に扱ってくれよ」
  だからやったんだ、と尚也は心の中でつぶやきつつ、表情と身振りだけで謝罪した。
「…そうか、お互い無為無策ってわけだな…よし、じゃあこうしよう」
  と神代が切り出してきた。
「とにもかくにも人に出会わなきゃしょうがねえ。この辺で一番人がいそうなのは、ここ(地図上の警察署を指差す)
と、ここ(同じくシーサイドモールを指差す)だ。さすがに俺一人では心細くて乗り込む気にならなかったんだが、
三人いればなんとやらってもんだろう。いっちょ、このへんを探索してみることにしないか」
  レイコの治療で多少はマシになったとはいえ痛々しく腫れた頬を、わずかに吊り上げる。不敵な笑み、のつもり、
なのだろう。また不快感がこみ上げてくるのを、尚也はなんとか押さえ込んだ。言っていること自体は、まっとうな
意見なのだ。ただ、尚也の意見とは、合わない。とはいえ、それは尚也の行動方針が一般から大きく逸脱しているから
であり、そのことで神代に不信を抱くのは筋違いというものであるという自覚はあった。
  レイコのほうをちらりと見る。目の色が、さっきまでと全く違う、と尚也は思った。先ほど神代から、ハザマ、と
いう名を聞いてからというもの、ずっと上の空だった。誰のことなのかわからないが、レイコの反応を見る限りでは、
彼女にとって大事な人物なのだろう。名を聞いただけですでに冷静さを失ってしまっている。
  となると、このうさんくさい男の動向に気を配り、自身とレイコの安全を確保するのは自分の責務だということに
なる、と尚也は思う。いつのまにかレイコのことを、人質でなく守るべき仲間として扱っていることには、まったく
気づかなかった。

          *    *    *

  「…お、動き出した」
  と、即席の相棒――塚本新が言う。手にはオペラグラス。真ッ黄色のボディに「サトミタダシ」のロゴがあるのを
見るに、おそらく先ほど拠点としていた薬屋においてあった品を目ざとくかっぱらってきたのだろう。
「あっちに行くのか…ああ、ええと、あっちの先は…たぶん、あれだな、うん」
「あっちだのあれだのではわからん」
  と南条圭は苛立ちを籠めてぴしゃりと言い放った。新のことは信用できると思っているが、なんとなく行動にズレを
感じることがある。さきほど尚也が何者かから攻撃を受けたときも、新は飛び出そうとする南条の腕を掴んで抑えた。
確かに出て行くタイミングとしてはあまり良くはなかった。それは理屈では分かっていても、どうにも気に入らない。
「そうあせるなって。慌てるナントカは貰いが少ないんだぜ」
  ぱちり、とオペラグラスを閉じて胸ポケットに仕舞うと、新は左の内ポケットから地図を取り出す。
「たぶん、目的地はあっちのショッピングモールだ…地図で言うと、ええと、これだな」
「…シーサイドモール、か…なかなか大きい施設のようだな」
  先ほど蓮華台ロータスで尚也に出会ったことを思い出す。おそらく物資の補給のために薬屋に立ち寄ったのだろう。
自分たちと出会ったせいで果たせなかった行動をもう一度試みる、というのは、考え方としてはかなり自然だ。
「さて、どうする? 君はこのまま後ろを引っ付いていってもよいし、読みに賭けて先回りを選んでもよい」
  と新はザックを背負いながら言った。妙な口調が気になったが無視して、南条もザックを手に立ち上がる。
「…二手に分かれる、というのはどうだ? 俺は後ろをつける。お前は先回りをする」
「挟み撃ちの形になるな、ってか? …まあまあだけど、あまり賛成はしたくないな。今のところ俺たちはコンビで
ようやく戦力として及第ギリギリなんだぜ。あそこに誰かいたらどうする? 逃げ足には自信あるけどさ」
  と南条の提案に新は冗談めかして反論した。確かにその通りだった。つくづく自分の無力さがイヤになる。せめて
もっと上位のペルソナを降魔していれば、手持ちの武器をすべて新に渡して自分はペルソナ一本で戦うという方法も
取れるのに、成長前の己が最初に目覚めたアイゼンミョウオウではいくらなんでも心もとない。
「…読みに、賭けよう。先回りだ。スーツの男も気になるが、なにかするとしたらモールについてからだろうし」
「賛成。後ろ尾行てるだけじゃ、修羅場になったときに間に合わないからな…よし、行こうぜ」
「…なあ、塚本」
  歩き出そうとした新の背中に、南条は声をかけた。
「なんでお前は、見ず知らずの俺たちのために、そんなに親身になってくれるんだ?」
「…なぁに言い出すかと思ったら、水臭いこと言うねェ南条くんは」
  新は南条の肩をぽんと叩く。
「仲間だろ?」
「…仲間、か」
「そうだよ、分かってるじゃんか。…ほら、早くしないと先回りにならないぜ」
  新が軽やかに走り出していく。見かけによらず身軽な男だ。南条は自分のザックを背負い直してその後を追って、
力いっぱい走り出した。なんとなく胸の中に渦巻くイヤな予感を振り払うように。



【時間:午前11時】
【神代浩次(真・女神転生if、主人公)】
状態:右腕負傷(治療はしたが完全ではない)、制服は着替えた
武器:レイピア、ゴルフクラブ、モデルガン(弾は出ない)
道具:赤巻紙×1、青巻紙×2、食料品など、ノートパソコン
現在地:港南区・シーサイドモール付近
行動指針:レイコとの同一行動の維持(尚也は利用価値がある間だけでよい)
      ハザマの探索、デストロイ(アキラとキョウジが最優先)
      シーサイドモールに戻って漁夫の利ゲット大作戦決行

【赤根沢玲子(if…)】
状態 やや疲弊、ハザマが気になって上の空
武器 無し
道具 無し(ライドウに預けたまま)
行動方針 魔神皇を説得 ライドウたちを探す ゲームからの脱出

【藤堂尚也(ピアスの少年・異聞録ペルソナ)】
状態 正常だが精神的に不安定 (電撃の影響はほぼ抜けた)
武器 ロングソード コルトライトニング
道具 ?
ペルソナ ヴィシュヌ
行動方針 葛葉ライドウを倒し、園村麻希の仇をうつ カオスヒーローとの再戦
      神代浩次の動向に注意し、レイコと自身の安全を確保

【南条 圭(女神異聞録ペルソナ)】
状態:正常
武器:アサノタクミの一口(対人戦闘なら威力はある)
   :鎖帷子(刃物、銃器なら多少はダメージ軽減可)
道具:ネックレス(効果不明):快速の匂玉
降魔ペルソナ:アイゼンミョウオウ
現在地:港南区・シーサイドモール付近
行動方針:仲間と合流 藤堂尚也の先回りをしてシーサイドモールへ

【塚本新(主人公・ソウルハッカーズ)】
状態:銃創による左肩負傷・応急手当済み(左手はまあまあ動かせる)
武器:作業用のハサミ 手製の焼夷弾×15 手製の爆弾×10
道具:物反鏡×1 傷薬×3 包帯 消毒液 パン(あんぱん・しょくぱん・カレーパン) オペラグラス
アルミパイプ(爆弾発砲用に改造済み) 銘酒「からじし」 退魔の水×10
行動指針:スプーキーズとの合流 先回りをしてシーサイドモールへ

***** 女神転生バトルロワイアル *****
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